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2019
02.15

設計がまずいと感じる時

Category: その他
先日用事があってとあるビル(超高層ビル)を訪れた。エントランスを入ってエレベーターの方に歩いていこうとすると、太い柱が行く手を阻むように立っているので、それをよけるように進まなくてはならなかった。

よりによって動線のど真ん中と言えるところに柱があるので、そこで人の流れが分断されてしまっていた。見てくれもかなり悪い。太い柱なので構造上重要なのは分かるが、計画の早い段階で何らかの回避策はとれなかったのだろうかと訝しく思った。

気になったので調べてみると、そのビルの設計も施工もいわゆるスーパーゼネコンと呼ばれる会社の手によるものであった。何か特別の事情があったのかも知れないが、設計者はこの出来上がりに満足しているのだろうか?もう少し熟慮の余地はなかったのだろうか?

ニュージーランド出身の友人がまだ日本に来て日が浅い頃、一緒に車に乗ると質問攻めにあうのが常だった。窓外に見える道路標識やらガードレールやら筆者にとってどうでもいいものが、彼女の目には大変珍しいものに映るようであった。

些細な内容の質問も多かったが、答えに窮するようなものもあった。例えば、道路脇に作られた排水用の溝。なんで左右両脇に作るのか?しかも蓋のない部分も多い。これでは脱輪しろと促しているようなものではないか。「道路を設計した人は馬鹿じゃないのか」とまで彼女は言うのであった。

ニュージーランドではどうなっているのかと逆に聞いてみると、排水部は中央にあってもちろん脱輪するような代物ではないのだそうだ。両国の標準的な道路幅とか短時間に降る雨量の違いとかが関係しているのかもと思ったりもしたが、確たる知識を持ち合わせなかったので黙るしかなかった。

「○○方面は次の交差点を曲がる」という道路標識も彼女には不可解であったようだ。"次の交差点"なら問題ないが、標識によっては"300メートル先の交差点を曲がる"となっていたりする。そんな距離感を要求するような標識をなぜ作るのだ。「標識の仕様を決めた日本の警察は馬鹿じゃないのか」とまで彼女は言うのであった。

「慣れの問題だよ」とか「日本の警察はフランスを手本にしているから馬鹿なのはフランスかも知れない」とか言って反論を試みたが、筆者自身何度かこの"○○メートル先を曲がる"標識に騙された経験があるので、彼女の主張も尤もだと内心思った次第である。

もっと些細なことだが、筆者が実害を蒙ったまずい設計の例を以下に示そう。


WU.jpg


これはパソコンの Windows Update を行った際に再起動を促す画面である。どこがまずいかお分かりだろうか?

この画面で"後で通知する"の時間を設定しても"今すぐ再起動"のボタンが押せてしまうのである。後で再起動したくて時間を設定しても、誤って"今すぐ再起動"のボタンを押すことだってあり得るのに、それについての配慮がされていないのがまずいのである。

筆者はその時決して再起動してはならなかった。それで、"後で通知する"の時間を余裕を見て 4 時間に設定した。そこでちょっと安心したのが運の尽きだった。"今すぐ再起動"を押してしまったのである。「再起動していいですか?」の確認もなく再起動処理に入ってしまったのである。

世界中で使われている Windows でなぜこんな明らかにおかしな仕様になっているのだろう?この画面を設計した人はこのことを認識しているのだろうか?

小学生の時からプログラミングを勉強していなくても、ちょっと想像力があればこんな設計にはならないだろうに。それとも、とにかく早く再起動させる方がセキュリティの面からも望ましいとでも思っているのだろうか。実害に会った身としては、真相を知りたいものである。


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2019
01.27

記号 h の意味は?

Category: その他
変数や定数にあてる記号は、なるべく習慣に従っておく方がよい、ということをポアンカレの「科学と方法」か何かで読んだ記憶がある。

例えば、変数を a、b、c で表し、定数を x、y、z で表してもいいのだが、そのような表し方は混乱を招くだけなのでやめておく方が賢明である、といったことが書かれていたと思う。

ある程度記号の割り当てが決まっていると、記号を見ただけで意味が浮かぶし、他人にも記号だけで話が通じるというメリットがある。

N、Q、M と並べば、大抵の人は「あれだな」と分かるだろうし、m、c、k と来れば「多分あれだろう」となるはずである。文脈もあればなおのこと意味は特定される。

もちろん、割り当て方が完全に統一されることは望むべくもなく、慣れない記号と付き合わなくてはならない時もある。そういう時は心理的に無用な負担を強いられているようであまり良い気分ではない。

今回は、記号 h について、定番の使われ方とそうでない場合の例を採り上げてみよう。

建築構造系なら、h を見て思い出すものと言えば、何はさておき「減衰定数」という人が殆どではないだろうか。応答スペクトルのキャプションにある "h = 5%" を見て、「この h とは何だろう?プランク定数?」なんて思う人はいないはずだ。

元々の振動方程式の減衰項は、(減衰係数)×(相対速度)で表されるが、減衰定数なるものを導入して係数の置き換えを行う。これは、減衰定数の値がちょうど 1 の時に臨界減衰を表すように、言わば正規化を行っているわけである(なので、「減衰定数」よりも「臨界減衰比」という呼び方の方が意味的には望ましいと言ってよさそうだ)。

この減衰定数、アメリカなどの英語圏の文献では、h が使われていない。例えば、チョプラ(文献 1)だと ξ が使われているし、クラフとペンゼン(文献 2)なら ζ である。この記号の使い方は、おそらく"正規化"という意味から来ていると思われる。

有限要素法では、歪んだ形をした要素も扱う必要があるので、定式化の際には実座標をそのまま使わずに正規化された座標を介して定式化する方法が採られる。その正規化座標の記号には、チェンキービッツの本でもそうだが、ξ, η, ζ といったギリシャ文字が使われるのが普通である。減衰定数もこれと同様であろう。

もう一つ、英語圏の文献で減衰定数に h を使いにくい事情があるように思われる。それは、時刻歴解析などで時刻 tn と時刻 tn+1 の差である"時間間隔"に h を使う習慣が、特に英語圏では結構あるようなのである。式に書くと、h = tn+1 - tn である。

日本だと、時間間隔には Δt を使うことが多く、英語圏でもそうなっているものも多いが、h を使っているものもちらほら見かけるのである。

またまた有限要素法の話になるが、有限要素法で精度を上げるアプローチとして、p 法と h 法という二つの方法がある。p 法では、要素数はそのままで、要素内で仮定する形状関数(多項式)の次数を上げるのである。p とは polynomial(多項式)の頭文字というのは間違いなさそうである。

もう一方の h 法では、要素内の次数はそのままに、要素数の方を増やす。つまり、要素のサイズを細かくする。h は、要素のサイズまたは幅を表す記号であり、時間間隔に h を使う習慣もこれと同じ流れにあると推測される。

この h が一体何の頭文字なのかというのは、筆者の長年の疑問である。ウィキペディアには、h は height(高さ)の略である、なんて書かれているが、これは眉唾情報ではないかと踏んでいる。

というのも、高さというより幅を指しているようだし、数学でも古くから幅に当たるものとして h が使用されているからである。

例えば、関数 f(x) 微分の定義は、lim(h→0) {f(x+h)-f(x)} / h のように書かれるが、この時の h を高さと解釈するのにはちょっと無理があるように思う。

といったわけで(?)、文化圏が変わると h は時間間隔を表すこともあるのである。実は、例のニューマークの論文(文献 3)でもそうなっていて、h は減衰定数ではないのである。これについては後日改めて。。。


参考文献

  1. A. K. Chopra : Dynamics of structures, Theory and Applications to Earthquake Engineering.

  2. Ray W. Clough and Joseph Penzien : Dynamics of structures, 3rd edition.

  3. N. M. Newmark : A method of computation for structural dynamics. Journal of the Engineering Mechanics Division, ASCE, p.67-94, 1959.





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2019
01.11

使い道のない公式?(大森公式について)

Category: その他
大雑把な式と言えば、構造ではなくて地震の分野の話であるが、ちょっと思い出したので書いておこう。

その式とは震源までの距離をエイヤで求める式である。「大森公式」と呼ばれる有名な式なのでご存知の人も多いかと思う。この公式は、地震の初期微動の継続秒数を8倍すれば震源までの距離がキロメートルで求まるというものである。

和達清夫著「地震」の「二十六 震源の位置を求める法」では以下のように説明されている。

初期微動継続時間というのは、始め縦波が来て次に横波が到着するまでの時間である。言い換えると、始め来た速度の早い波に対して次の速度の遅い波がどの位遅れて来たかを示す時間である。

この遅いものが遅れる度合いは、遠い所から出発してくるほど余計に遅れるわけであるから、結局震央距離と初期微動継続時間との間にはある関係が存在している訳である。

我々は雷がなる時に、その前に稲妻が光ってその後何秒経って雷が鳴り出したかを測り、その秒数を三倍した町数位だけ雷が遠くで鳴ったというやり方を知っている。今地震の際の初期微動継続時間の時も同じような関係が分っているのである。

ただし地震の深さでその掛ける数が異るのであるが、まず普通は初期微動の秒数に2を掛けた里数あるいは8を掛けたキロ数だけ遠くに震源があると思ってよい。従って、初期微動が十秒なら、震源までの距離はおよそ八十キロである。

今村明恒の「地震の話」にもほぼ同じような説明が出ている。雷の例を出しているところもそっくりである(下記)。

... われわれは最初の弱い部分を初期微動と名づけ、中頃の強い部分を主要動或いは主要部、終りの弱い部分を終期部と名づけている。終期部は地震動の余波であって余り大切なものではないが、初期微動と主要部とは極めて大切なものである。

両者ともに震源から同時に出発し、同じ途を通って来るのであるけれども、初期微動は速度大に、主要動はそれが小なるために斯く前後に到着することになるのである。あたかも電光と雷鳴との関係のようなものである。

もっと具体的にいうならば、初期微動は空気中における音波のような波動であって、振動の方向と進行の方向とが相一致するもの、即ち形式からいえば縱波である。主要動はそれと異なり横波である。震源の近い場合には縱波はおよそ毎秒五キロメートルの速さで進行するのに、横波は毎秒三・二キロメートルの速さで進行する。

 初期微動が到着してから主要動が来るまでの時間を、初期微動継続時間と名づける。読者は初期微動時間だけを知って震源距離を計算して出すことは、算術のたやすい問題たることを気付かれたであろう。実際われわれはこの計算に一つの公式を用いている。即ち初期微動継続時間の秒数に八という係数を掛けると、震源距離のおよその値がキロメートルで出て来るのである。

ただ、この「八という係数」をどう決めたのかを筆者は知らない。今村が書いているように、縦波が 5 km/s で、横波が 3.2 km/s だと、この係数は 8.9 あるいはもっと大雑把に 9 ということになるのだが、なぜ 8 とされているのだろうか?

きっと大森房吉の書いた本なり論文なりに出ているのだろうと思ってちょっと調べてみたが、該当するものが見当たらなかった(知っている人がいたら教えて下さい)。

雷までの距離が分かれば、「まだ遠いから大丈夫そうだ」とか「かなり近いから建物の中に避難していよう」といったようにそれなりに役に立つ。だが、震源までの距離が分かったとして何が嬉しいのだろうか?何も使い道が無いように思えてしょうがない。

思い付くのは「自己満足が得られる」くらいだろうか。この公式を使うにはある程度修養を積むことが必要なようで、今村明恒もそうやって習得した技を鼻にかけているような感じを受けるのである。「地震の話」の上記の部分の後には、以下のようなことが書かれている。

前に述べた通り、初期微動の継続時間は震源距離の計算に利用し得られる。この継続時間の正確なる値は地震計の観測によって始めて分かることであるけれども、概略の値は暗算によっても出て来る。

著者の如きはそれが常習となっているので、夜間熟睡しているときでも地震により容易に覚醒し、夢うつつの境涯にありながら右の時間の暗算等にとりかかる癖がある。これを器械的観測の結果に比較すると一割以上の誤差を生じた例は極めて少ない。

著者は更に進んで地震動の性質を味わい、それによって震源の位置をも判断することに利用しているけれども、これは一般の読者に望み得べきことでない。

とに角、初期微動継続時間を始めとして、発震時その他に関する値を計測し、これを器械観測の結果に比較する事は願る興味多いことである。自分と観測所との間隔が一二里以内であるならば、両方の時刻ならびに時間共に大体同じ値に出て来るべきはずである。

ついでに書いておくと、今村明恒が執筆した、関東地震(1923年)の調査報告である「震災予防調査会報告第 100 号甲」の冒頭にもこの技を使用する場面が出てくる(下記 一部旧漢字などを現代的な書き方に修正)。

体験  自分は大震の起った当時帝国大学地震学教室内に著席して居った、最初はやや緩慢な微動を以って始まったので自分はそう大きな地震とも思わず、例の通り暗算によっての初期微動継続時間を勘定し始め、兼ねて大震動の方向に注意しつつ経過して行くと、震動が次第に増大し、三四秒の後にはそのかなりに強い地震であることに気がついた、....

大森公式に実用性はなさそうだが、小学生の算数の問題のネタには使えそうである。例えば、「P君とS君がかけっこをしたところ、25 秒差でゴールしました。P君とS君の走る速さが、それぞれ秒速 8 m と 4 m だったとすると、スタートからゴールまでは何メートルでしょう(答え: 200 m)」といった問題はなかなかの良問ではないだろうか?



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