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2018
08.01

解析誤差のはなし(その2 テーパー付き棒を引張る問題)

Category: 構造解析
前回の記事では棒を引張る問題を有限要素法(変位法)で解く過程を辿り、分布荷重が作用したり軸剛性 EA が一定でない場合には正解が得られないことを確認した。

最後に書いた"有限要素法の碩学"とは、"ウィルソンの θ 法" などで知られるウィルソン(E. L. Wilson)のことである。ウィルソンの本(文献 1)に、この EA が一定でない棒を引張る問題が出ているので今回はその例題を採り上げてみたい。

この例題の出ている第 4 章(4. One-Dimensional Elements)の導入部には興味深いことが書かれている(拙訳と原文)。

ほとんどのエンジニアは、2次元要素と3次元要素の方が1次元骨組要素よりも格段に性能も良くて正確であるといった印象を持っているが、3次元空間のあらゆる部分で使用される non-prismatic 骨組要素が、他のどのようなタイプの有限要素と比べても、最も複雑かつ有用な要素であることは間違いないというのが、実用的な構造解析プログラムの研究開発に 40 年以上携わってきた私の主張するところである。

Most structural engineers have the impression that two- and three-dimensional finite elements are very sophisticated and accurate compared to the one-dimensional frame element. After more than forty years of research in the development of practical structural analysis programs, it is my opinion that the non-prismatic frame element, used in an arbitrary location in three-dimensional space, is definitely the most complex and useful element compared to all other types of finite elements.

Non-prismatic 要素とは、以前の記事にも書いたように、要素長さに沿って断面特性が一様ではない要素である。軸剛性 EA が一定でない棒要素や曲げ剛性 EI が一定ではないはり要素は non-prismatic 要素である。また、念のために書いておくと、はりやトラスは1次元要素、板やシェルは2次元要素、ソリッドは3次元要素である。

Non-prismatic な1次元要素は "definitely the most complex and useful element" であるとまで書かれている。かなり強い口調と言えないだろうか。

前回の記事に書いたようなことは有限要素法を使用している人たちにもあまり意識されていないと思うが、それと同様にはり要素やトラス要素を使用した骨組の解析は誰がやっても同じだろうというのが一般的な見解のようである。だが、ウィルソンも書いているように、1次元要素を用いたモデル化とはもっと奥深いものであると言ってよさそうである。

そのことを確認する端緒となるのが、下図に示す今回採り上げる例題である("4.2 Analysis of an axial element")。テーパーが付いている以外は前回の問題と同じである。

analysis_error_2_fig1.jpg

棒の長さ L = 80(in.)、材のヤング率 E = 1000(ksi)、荷重 P = 10(kips)である。ウィルソンのオリジナル問題を尊重して単位をインチやポンドのままとしているのでイメージしにくいかも知れない。

SI で書いておくと、80(in.) は 2000(mm) くらい、10(kips) は 45(N) くらいである。標準的な鋼材のヤング率は 29000(ksi) くらいなので、1000(ksi) は鋼材に比べるとかなり小さい値である。

棒の断面積 A は、長さ方向に以下のように線形変化すると仮定する。

analysis_error_2_eq1.jpg

x = 0 で A = 10(in.2)、x = 80 で A = 2(in.2) なので、

analysis_error_2_eq2.jpg

という書き方もできる。平均断面積 Aa (下添え字の a は average の意)を求めておくと、(10 + 2) / 2 = 6(in.2)となる。6(in.2)は、3870(mm2)くらいである。

前回と同じくこれを有限要素法(変位法)を用いて一要素で解くわけだが、前回の一定断面の棒では下端( j 端)の変位は以下で与えられた。

analysis_error_2_eq3.jpg

今回は断面積 A の代わりに Aa を使用すればよいので、

analysis_error_2_eq4_2.jpg

のように下端の変位が求まる。Aa を使用するのは、要素内でひずみが一定であることからひずみエネルギ計算時の体積積分が AaL となるからである。

一応確認しておこう。応力 σ とひずみ ε の間にフックの法則が成り立つので、要素のひずみエネルギは、

analysis_error_2_eq5.jpg

ここに、V は要素の体積である。ひずみを変位 u で表すと、

analysis_error_2_eq6.jpg

であるから、これを代入して、

analysis_error_2_eq7.jpg

ここに、L は要素長さ、{d} は要素の節点変位ベクトル、[K] は要素剛性マトリックスである。

求まった変位からひずみを介して応力を求めると、

analysis_error_2_eq8.jpg

が求まる。要素内で応力が一定となる結果が得られたわけだが、これはもちろん正解ではない。実際には、軸力が一定で断面積が変化することから、応力は断面積が最大の上端で最小となり、断面積が最小の下端で最大となることは容易に分かることである。

以上の結果がどれほどの誤差を含んでいるかについてはまた後日。。。


参考文献

  1. Edward. L. Wilson : Three-Dimensional Static and Dynamic Analysis of Structures - A Physical Approach With Emphasis on Earthquake Engineering, Third Edition, Computers and Structures, Inc. Berkeley, California, USA, Reprint January 2002.





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2018
06.25

解析誤差のはなし

Category: 構造解析
先日の片持ちはりの問題では、はり部材を1要素でモデル化した。この例では1要素だけでも正解(厳密解)が求まる(あくまでもベルヌーイ・オイラーの仮定に基づく"はり理論"での正解だが)。

もっと精度を上げるために要素数を100まで増やそうとは誰も思わないだろうが、1要素で十分な理由については初歩的過ぎて忘れてしまっている人も多いのではないだろうか。今回はこの辺りについて復習してみよう。

片持ちはりの例では軸と曲げの両方を考える必要があったが、ここでは話を簡単にするために下図のようなフツー(均質で等断面)の棒を引張る問題をまずは考える。

analysis_error_fig1.jpg

有限要素法(変位法)で問題を解くので、長さ L の棒を1つの要素として、要素の始端を i 節点、終端を j 節点とし、i 節点から j 節点の向きに x 軸をとり、軸変位を u と書くことにする。そして、要素内変位 u(x) を x の一次式として以下のように表す。

analysis_error_eq1.jpg

軸ひずみ ε はこれを微分すればよいので、以下のように要素内で一定となる。

analysis_error_eq2.jpg

棒の断面積を A、ヤング率を E、軸応力を σ(引張を正) と書くことにすると、両端の軸力 Ni、Nj は、

analysis_error_eq3.jpg

ベクトルとマトリックスの形で書けば、

analysis_error_eq4.jpg

始端固定(ui = 0)、終端に外力 P が作用する(Nj = P)条件から、

analysis_error_eq5.jpg

となり、これを解いて

analysis_error_eq6.jpg

が求まる。

これが正解になっていることを確認するには、材料力学で学んだ棒の釣合い式を変位で表現してみればよい。長さ L の棒の一部を切り出して作用する力を書き込むと下図のようになる(ちなみにこの図は free body 図と呼ばれる)。


analysis_error_fig2_2.jpg

部材には分布荷重が作用し、部材断面積は長さ方向に一様ではないという、上記の例よりも一般的なものを想定した図としている。図中の N は軸力、px は単位長さあたりの分布荷重である。力の釣合いより、

analysis_error_eq7.jpg

これを整理して以下を得る。

analysis_error_eq8.jpg

N = σA、σ = Eε、ε = du/dx であるから N = EA du/dx である。これを代入すれば、変位で表現した釣合い式が以下のように得られる。

analysis_error_eq9.jpg

px として自重などが考えられるが、もし px = 0 で軸剛性 EA が x に依らず一定であれば、釣合い式は、

analysis_error_eq10.jpg

となる。この微分方程式を解くと、

analysis_error_eq11.jpg

C1、C2 は積分定数である。x = 0、x = L での変位をそれぞれ u0、uL とすると、C2 = u0、C1 = (uL - u0)/L が求まる。これより、変位 u は以下となる。

analysis_error_eq12.jpg

これは先の有限要素法(変位法)のアプローチで部材を1要素として要素内変位を x の一次式に置いた場合の式と一致する。つまり、先のアプローチで仮定した変位は釣合い式を満足するのである。

その他の支配方程式で乱されるものが無いことはこれまでの展開から明らかだから、正解が求まることが了解されるかと思う。

逆に言うと、もし分布荷重が作用したり軸剛性 EA が一定でなかったりする場合に同じアプローチを取るならば、得られる解はもはや正解ではないことになる。分布荷重は等価節点力として処理されるので構造全体としての釣合いが乱れるわけではないが、解くべき方程式がすり替わっていることに注意したい。

曲げの場合も同様で、記号や符号の説明は省略するが、たわみを w として元々の釣合い式は、

analysis_error_eq13.jpg

であり、分布荷重がゼロで曲げ剛性 EI が一定なら、

analysis_error_eq14.jpg

である。これを積分してたわみは 3 次多項式となる。もし分布荷重が作用したり曲げ剛性 EI が一定でなかったりする場合に 3 次のたわみを用いるなら近似解しか得られないのである。

以上のことは、文献 1 に書かれている曲げ問題の内容に軸問題を追加して多少アレンジして書いたまでである。興味のある人は、文献 1 の"5-5 変位法の簡単な応用例"を参照されたい。該当部分を以下に書き写しておこう(p.75)。

... 本節に説明した変位法による FEM は、正解ではなく、近似解を与えるものであることを付言しておきたい。このことは1つの要素内の we(x) を式 (5.73) のような三次式で近似していること、および分布外荷重 p(x) を等価節点力で置換していることからも明らかであろう。

このように分布外荷重を等価節点力で置換し、はり要素のたわみ形としては外荷重が零の場合のたわみ形を用いるため、このような FEM で得られた曲げモーメントやせん断力は節点で不連続となるのが一般的である。...

とは言っても、有限要素法(変位法)のアプローチは広く用いられているわけだし、今回のようなことは特に気にしなくてもよいのでは?と思われるかもしれない。実際、多くの人は気にしていないと思う。

だが、とある有限要素法の碩学は著書の中で今回のことを敢えて採りあげている。そういった例は他の本ではあまり見かけないが、新しい視点を得るのに有意義と思われるので、後日それを紹介しよう。


参考文献

  1. 驚津久一郎 : エネルギ原理入門 有限要素法の基礎と応用シリーズ3 培風館 1980年




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2018
05.31

斜め方向の強制変位を受ける片持ちはりのようなもの(その4)

Category: 構造解析
先日の「斜め方向の強制変位」の記事について補足。

強制変位の問題を採り上げたのは、強制変位問題も荷重を与える場合と本質的には何ら変わらないことを示したいがためであった。これは、剛性方程式 [D]{δ} = {P} は、左から [D] の逆行列をかければ、{δ} = [D]-1{P} = [C]{P} となり、2つの式の形は全く同じになることからも了解される。ここに、{P} は荷重ベクトル、{δ} は変位ベクトルであり、[D] は剛性マトリックス、[C] はたわみ性マトリックスと呼ばれる。

ただ、気を付けたいのは、ある自由度に関して何も規定しないことは、荷重をゼロに規定していることになるのに対して、変位をゼロに規定するには、その自由度を拘束しなくてはならないことである。

例えば、斜面に沿う方向に強制変位させるには、斜面直交方向を拘束する必要があるのである。斜面直交方向に何も規定しない(荷重をゼロに規定する)と、現実的にはありそうもない境界条件の問題を解いていることになる。

平面の片持ちはりとしたのは、自由度が3つ稼げるからであった。残る自由度は最大でも3であるから、手で解くこともできる。

剛性方程式を解く際は、変位や荷重のベクトルを既知成分と未知成分とに分けて、それに応じて全体剛性マトリックスを並べ替えるということが通常行われる。マトリックス演算では部分マトリックスをあたかも一つの成分と見なすことができるので、並べ替えた後の部分マトリックスや部分ベクトルを使ってスッキリと式の展開を行うことができる。

だが、自由度数の高が知れている時ははわざわざ並べ替えなくても必要な部分にだけに着目すればよい。先日の記事でも以下のように必要な行と列に帯をかけ、帯が重なった部分の成分(k44、k46、k64、k66)だけを抜き出した。

specified_disp_4_fig1.jpg

以前紹介したマーチン(H. C. Martin)のマトリックス法の教科書でもこのように帯をかける説明となっていたと記憶している。

記事の(その2)では、強制変位の並進2成分のうち一方のみを規定すると、規定しない成分の方の応答は構造物の剛性に応じて変わってくるため、変位ベクトルは一見"予想外"の方を向く結果となることを見たが、定式化によっては、並進2成分の両方(つまり変位ベクトル)を規定しても(かなり特殊な条件下では)変位ベクトルが規定した方向からずれることも起こり得る。

実は元々はこちらのケースを初めに考えていたので、今回はこの元々の話題を載せようと思っていたのだが、かなりマニアック度"大"な話なので掲載は見送ることにして、この定式化がいわゆる「ペナルティ法」と呼ばれるものであることだけを記しておこう(ここまで書けば、この方法を知っている人はボツ記事の内容がイメージできるかも知れない)。



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