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建築構造学事始

ある意味有名なトラス

有限要素法の嚆矢とされるターナー(Turner, M. J.)らの論文(文献 1)の前半では、簡単な構造物を対象に提案手法の定式化の例が示されている。

その中の一つは、下図(原論文の"FIG.2 Simple truss."を模写)に示すようなトラス構造物である。

art241_fig1.jpg

この構造物の節点力と節点変位の関係は以下で与えられる(原論文の式(7a))。

art241_eq1.jpg

Fx, Fy は x, y 方向の節点力、u, v は x, y 方向の節点変位である。この導出は、現代の有限要素法の教科書を開けば5ページ目(?)くらいに出ているような内容なので説明は不要であろう。

これに剛体変位を生じないだけの拘束を与える。ここでは、節点 1 と 2 の並進自由度を拘束する。式にすると以下である。

art241_eq2.jpg

先日の記事 に示したように、変位と力のベクトル内の成分を未知と既知とに分類して並べ替える。また、それに応じてマトリックスの行と列も並べ替える。そのように並べ替えたものを以下に示す(原論文の式(7c))。

art241_eq3.jpg

並べ替えた剛性マトリックスを以下のように書く。

art241_eq4.jpg

これを用いて、上記の式は以下の二式となる(原論文の式(8a)と(8b))。

art241_eq5.jpg

art241_eq6.jpg

第一式から、未知の節点変位は既知の作用力を用いて以下のように表される。

art241_eq7.jpg

これと第二式から未知の反力は既知の作用力を用いて以下のように表される。

art241_eq8.jpg

以上がトラス構造物の定式化の流れであり、「縮約」が行われているのが見て取れる。

ただ、この論文はトラス構造物が解きたいがために書かれたものではなく、トラスはあくまで"前座"であって、メインはその後に出てくる飛行機の翼(実験用後退翼)の解析である。

今回の記事の内容からは横道に逸れるが、この論文で筆者が面白いと思ったのは、翼を構成する桁(スパー(spar))と小骨(リブ(rib))については 1 次せん断変形を考慮したいわゆるティモシェンコはり(Timoshenko beam)としてモデル化されていることである。「こんな所にティモシェンコはりが!」と思った次第である。

また、翼の外板(cover skin)には平面応力要素が使用されていて、いわゆる変位法によって解かれているのであるが、現代のようにいきなり変位場を仮定するのではなく、ひずみ場を仮定するところからスタートしているところも興味深い。これは、そもそも本手法が、単純なひずみの重ね合わせで平面応力要素の変形を表現することで要素の剛性を導くというアイデアにその端緒があったからと思われる。

今回敢えて"前座"にあたるトラス構造物の方を採り上げたのは、前回触れた Guyan reduction へと話を繋げるためである。。


参考文献、参考サイト

  1. Turner, M. J., Clough, R. W., Martin H. C. and Topp, L. J. : Stiffness and Deflection Analysis of Complex Structures. Journal of the Aeronautical Sciences, Vol. 23 No. 9, p. 805-823. 1956



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解析ソフト vs. 手計算(門型ラーメン編 その4 水平力が作用する場合)

今回は門型ラーメンに下図のように水平力が作用する場合を考えてみよう。たわみ角法での分類で言えば、「節点が移動するケース」である。

art237_fig1.jpg

まず、たわみ角法による手計算から。部材 AB についてのたわみ角法の式を書くと以下の通り。

art237_eq1.jpg

このラーメンは左右逆対称に変形するので、節点 B、C の節点角をそれぞれ φB、 φC と書くと、φB = φC であり、この条件を使用して門型ラーメンの左半分だけを考える。

部材端部の曲げモーメントは以下となる。

art237_eq2.jpg

節点方程式は以下となる。

art237_eq3.jpg

層方程式は左側の柱だけで考えて以下となる。

art237_eq4.jpg

つまり、未知数を φB、ψ とした以下の2式が成立する。

art237_eq5.jpg

これを解くと以下が得られる。

art237_eq6.jpg

これを上記の部材端部の曲げモーメントの式に代入して、

art237_eq7.jpg

寸法値やら荷重値やらは先日のものと同じで下図の通り(はりの剛比 k は 0.5)。

art237_fig2.jpg

部材端部の曲げモーメントは、

art237_eq8.jpg

曲げモーメント分布図を描くと以下となる。

art237_fig3.jpg

一方、解析ソフトでの結果は以下となり、今回もたわみ角法の結果とは微妙に異なる。

art237_fig4.jpg

○IDAS のような解析ソフトでたわみ角法と同じ曲げモーメント分布を得るには、前回と同様「軸変形を無視」しないといけないので、下図のような細工を施すことが考えられる。

art237_fig5.jpg

水平荷重 P を左側の柱頭に作用させる代わりに、左右に半分ずつ振り分けている。これは、はりが軸変形を生じないようにするためである。

もう一つの細工として、左右の柱頭を水平方向にローラー支持としている。これは、柱が軸変形を生じないように Y 方向を拘束する一方で X 方向には自由に移動できるようにするためである。

この処置で目出度くたわみ角法と同じ曲げモーメント分布が得られる。ただ、このような細工をしていると、同じ問題を解いている感じがしない、何だか「反則」を犯しているような気がするという難点がある。。。


解析ソフト vs. 手計算(門型ラーメン編 その3 手計算と合わせるには?)

前回からの続き。。。

○IDAS のような解析ソフトでたわみ角法と同じ曲げモーメント分布を得るにはどうしたらよいだろうか?

手っ取り早い方法は、たわみ角法で仮定している「軸変形の無視」を支持条件で実現することである。この例の場合だと、下図のように柱頭の X、Y 方向とも並進自由度を固定してしまうのである。

art236_fig1.jpg

こうすると当然、新たに追加した支持からの反力が発生するので、柱脚(節点 1 と 5)の反力も変わってくる。なので、同じ結果は得られないが、少なくとも同じ「曲げモーメント分布」を得ることは出来る。

全体剛性方程式は前回と変わらず以下である。

art236_eq1.jpg

形は同じだが中身は当然異なり、各ベクトルは以下となる。

art236_eq2.jpg

Excel で [K11] と [K21] から未知変位ベクトルと未知荷重(反力)ベクトルを求めたものが以下([K12]、[K22] は今は不要なので表示していない)。

art236_fig2.jpg

求まった変位と要素剛性方程式から部材両端の全体座標系での断面力を Excel で求めたものが以下。手順は前回と同様。

art236_fig3.jpg

曲げモーメントのセルを朱色としているのも前回と同様である。単位は N.mm なので、N.m とすれば、たわみ角法の結果と一致することが分かる(前々回の記事を参照)。


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