--
--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2016
08.21

当たるも地震学当たらぬも地震学

Category: 地震工学史
こういうことを言うと地震学を専攻している人に怒られそうだ。だが、未来を予見するという観点からすると、地震学は誕生の時から殆ど進歩していないように思われる。東日本大震災然り、先日の熊本の地震然りである。

火山の噴火については地震よりも予知しやすいのかと漠然と思っていたのだが、一昨年の御嶽山の噴火でこの甘い考えも吹き飛ばされた。

2011年3月の東日本大震災が起きる少し前、筆者は NHK で放送されていた地震をテーマにした番組を見ていた。その番組には東北地方の某大学の先生が出演されていて、今後起こるとされる南海地震での高知市の被害について見解を述べられていた。

この先生は地震学が専門ではないのかも知れないが、「高知のことより自分の大学のある東北の方が懸念されます」といったコメントはなかったと記憶している。

熊本と同じく福岡も比較的地震の少ないところである。だが、2003年3月に最大震度6弱の福岡県西方沖地震が発生した。福岡市の揺れは大きかったが、被害は比較的小さかったのは不幸中の幸いであった。

福岡市を横切る断層として有名なのが警固断層である。この警固断層について松田時彦著「活断層」(岩波新書、1995年)には以下のような記述がある(5 地域を診断する/7 九州の活断層と地震/福岡県の活断層群)。

はっきりしたことはまだわかっていませんが、警固断層は水縄断層( B 級)にくらべて、はるかに活動的でないようなので、B 級よりも下で、C 級ではないかと考えられています。だから、活動するのはたぶん数千年よりもさらにまれなことかもしれません。

福岡県西方沖地震は、警固断層そのものが動いたのではないという解釈もあるので、この記述はセーフなのかもしれないが、すぐそばの断層が数千年どころか 8 年後に動くのだったら、それについてもコメントして欲しいと素人としては思ってしまうのである。

地震学草創期の頃は、地震予知、予測への期待は今よりずっと大きかったと想像される。今村明恒が関東地震を「予知」したのは有名だが、大森房吉はそのような行為を批判する側にあった。大森が地震は到底予知出来ないという認識に立っていたからではなく、社会に与える負の影響を懸念してのことであったようである。

大森の地震予知とも言えることについて書いてある文献もある。以下は内藤多仲の「日本の耐震建築とともに」の「アメリカ式建築は不安」と題した節の記述。

大正十一年四月、東京地方にかなりの地震があった。奇しくも大地震の前年であるが、私は地震の直後、地震の神様といわれた大森博士を訪ねて"この先き大地震災は起こるでしょうか"とおうかがいしたことがある。すると先生は、これだけのものがきたのだから当分大丈夫だろう、といわれた。

つまり、地震というのは地核の運動によって起こるものだが、地核が押し合い引っぱり合う力が蓄積して、一度にこわれれば大地震が起きるが小刻みにこわれれば大地震は起こらぬというのである。神様といわれた大森博士ですら、翌十二年の大地震を予知できなかったのである。

これは予言が外れた例だが、当たったものもある。和達清夫の「地震」の「四 我が国に於ける地震の分布 付、地震帯」と題した章には以下のような記述がある。

以前は地震学者によって地震帯というものが随分重要視されたものである。その地震帯すなわち地震がよく起る帯状の地域の中で、一度大きい地震があると、その場所はその後しばらくは平穏に打ち過ぎ、その地震帯中の他の場所に於いて大地震が予期されるというので、これには大森房吉先生の有名なイタリアの地震に対する予言というのがある。

すなわち第七図のようにイタリアには 1、2、3、... というように大地震が起って来たので、その次には今までになかった 12 の所に大地震が来るであろうと考えられておられたらば果してその後そこに大地震があった。なおその後ローマの東に15番目の大地震があって、この地震帯の間隙を埋めたのである。


第七図に示される 1、2、3、12、15番目の地震の起きた州は以下の通り。

1 1638年 カラブリア州
2 1659年 カラブリア州
3 1688年 カンパニア州
12 1857年 バジリカータ州
15 1915年 アブルッツォ州

第七図を見ながら、1、2、3、12、15の地域に筆者が手動で丸印を付けたものを以下に示す。

Italy_EarthquakeHistory.jpg

丸印は手動で作成したものなので、不正確なものであることを断っておく。興味のある方は、和達清夫の「地震」を参照されたい。

現代でも地震の発生確率といったものが公表されるが、そのような数値には主観が入っているのでは?と思うこともあるので、筆者は話半分程度に聞くようにしている。発生確率の発表もないよりはあった方がいいとは思うけれど。。。



スポンサーサイト
Comment:0  Trackback:0
2016
03.29

調和地動を受ける非減衰1質点系の応答

Category: 地震工学史
前回の記事のついでに、ダヌッソ(Arturo Danusso)が展開した震動論について軽く触れておきたい。その内容は、若干のアプローチの違いはあるものの、今日の教科書の初めの方に掲載されている「調和地動を受ける質点系の応答」や「モーダルアナリシス」とほぼ同じものである。

そこで、ダヌッソの理論について書く前に、現代の教科書の「調和地動を受ける 1 質点系の応答」の説明を先に見ておこう。柴田明徳著「最新 耐震構造解析」なら、「1・4 調和外力に対する応答 (C) 調和地動に対する過渡応答」に出ている内容である。以下で使用する記号は、同書で使われているものに合わせている。

ダヌッソは減衰を考慮していないので、ここでも非減衰系について議論することにする。そうすると、式はかなり簡単になる。

時刻 t での地動の変位( y0 )を y0 = a0 cos pt と仮定すると、系の相対変位( y )は、初期条件( t = 0 で y = 0、dy/dt = 0 )を適用して以下のように求まる。


eq1_3.jpg


ここに、ωは系の円振動数である。上式は、「最新 耐震構造解析」の式(1.90)である。だが、後での議論のために若干表現を変えてある。

地動の変位を y0 = a0 sin pt とした場合は、「最新 耐震構造解析」には出ていないが、同様な議論から以下のように求まる。


eq2.jpg


上記では変位応答しか求めていない。速度や加速度が必要になれば t で微分すればよい。非減衰系なので、加速度応答だけでよければ、運動方程式に上記の変位解を代入して求めることもできる。

ところで、地動変位を前者のような余弦に仮定すると、t = 0 で地面は既に変位していることになる。一方、後者のように正弦で置くと、t = 0 での地面の速度はゼロではないことになる。

このことは本質的にはどうでもよいことではあるが、なんとなくスッキリしないと感じる人もいるのではないだろうか。後で見るように、ダヌッソはスッキリしなかったらしく、t = 0 で地面の変位、速度ともゼロになるように配慮している。

みんな持ってる(?)メイトク先生の「最新 耐震構造解析」は、第三版が最新版のようである。筆者が所有している本は少し古いものなので、上記の節番号や式番号は第三版とは異なっているかも知れないのでご注意願いたい。

続きは後日。。。



Comment:0  Trackback:0
2016
01.10

つくられた帝国ホテル神話?

Category: 地震工学史
「耐震建築と聞いて連想する人物は?」

この質問に対するアメリカ人の答えは、なんとフランク・ロイド・ライトだそうである。思わずずっこけそうになる回答だが、R. Reitherman は以下のように書いている(文献1)。

アメリカでは(他の国も同様だと思うが)、"世間一般の人"に、地震と関わりのある建物と建築家の名前を一つ挙げてもらうと、大抵の人が「フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル」と答える。

何故であろうか?私が聴衆に向かってこの質問をした際に何度も耳にした答えは、「殆どの建物が倒壊した東京大地震にも耐えたのだから」といったもので、帝国ホテルは、言わば免震建築だったのだそうだ。

Ask the "person on the street" in the United States, and perhaps in other countries as well, to name one designer and one building that has something to do with earthquakes, and a very common answer is "Frank Lloyd Wright and the Imperial Hotel."

Why? The answer I have heard many times when I pose this question to audiences is "because it stood up in the great Tokyo earthquake while most of the rest of the buildings fell down," and people will also say, in layman's terms, that the building was seismically isolated.

筆者の感覚では、一般人の答えは「そんなの知りません。」だと思う。筆者自身、建築を学び始めた当初は、いわゆる有名建築家の名前を一人として知らなかったくらいなので。

だが、一般の人でも五重塔が地震に強いということを知っている人は多いかも知れない。少し専門的に建築(しかも構造)を勉強している人であれば、武藤清と霞が関ビルなどを挙げるかもしれない。

R. Reitherman が実際に調査してみた結果、この一般に流布している考えは全く誤ったもので、今でいうところの都市伝説の類の話なのだそうである(下記)。

私は1970年代に帝国ホテルの耐震設計に関して調査した際に、東京にあったもっと大きな建物は、平均的に帝国ホテルと同等かそれ以上に地震によく耐えたことを見出した

Back in the 1970s when I did research on the seismic design of the Imperial Hotel, I found that other, larger buildings in Tokyo on average did as well or better in the earthquake

また、帝国ホテルは免震建築ではなくて、短い杭を持つ一般的なコンクリートフーチングが全く普通に地面に埋められていた(very conventionally rooted in the ground with a typical concrete spread footing on short piles)とも書かれている。

だが、この伝説は度々繰返されるほど根強いものらしい。タイム誌から出ている Great Buildings of the World にも以下のような記述が見られるそうである。

東京にある帝国ホテル、その巧妙な構造支持システムは、周囲の殆どの建物を倒壊させた1923年の壊滅的な地震からホテルを無傷の状態に守った。

the Imperial Hotel in Tokyo, whose ingenious system of structural supports kept the hotel intact during a devastating 1923 earthquake that flattened almost all the buildings around it.

前回書いたトリファナック(Mihailo D. Trifunac)は、もちろんこういった「伝説」のことは周知の上で、地盤の柔らかい層が地震エネルギを吸収するといった考えは新しいものではないとして、以下のフランク・ロイド・ライトの言葉を引用している。

... 地面の波打つ動きによって、長い杭のような深い基礎は動揺し、構造物を揺り動かすだろう ... その泥層は、激しい衝撃を和らげるのに十分なクッションに思えた。建物をその上に浮かべればいいじゃないか ...

... because of the wave movements, deep foundations like long piles would oscillate and rock the structure...That mud seemed a merciful provision - a good cushion to relieve the terrible shock. Why not float the building it?...

上記の記述は、フランク・ロイド・ライト自伝の"Building Against Doomsday(Why the Great Earthquake Did Not Destroy The Imperial Hotel)"に書かれている。帝国ホテルの「伝説」はこの本に端を発するようである。

文中の "That mud(その泥層)"は、帝国ホテルの敷地下にあった柔らかい泥層のことである。ライトはこの泥層に"チーズ"という愛称(?)を付けていたほど思い入れがあったようで、上記文中ではこの層を "a merciful provision" だと言っている。

直訳すれば "慈悲深い提供物" であるが、天の思し召しか何かによって運良く与えられたものといったニュアンスであろうか?自伝のこの章には、日本の風土や信仰などへの言及があるので、神と関係する何かを指した言葉なのかもしれない(背景が分からないのでないので特に訳していない)。

地盤の専門家でもないライトがどうしてこのような考えを持つに至ったのであろうか?筆者には、末広恭二らの行っていた研究の影響も、直接的では無いにしろ、あるように思われるのである。後日、その辺りについて、R. Reitherman の調査報告などを追いながら見ていきたい。

参考文献

  1. Robert Reitherman : Earthquake Mythology adapted from the 2014 CUREE Calendar illustrated essays by Robert Reitherman

  2. Frank Lloyd Wright : An Autobiography




Comment:4  Trackback:0
back-to-top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。