2013
11.30

事実が理論に合わぬなら、事実を変えよ

Category: 耐震工学
If the facts don't fit the theory, change the facts.

これは、アインシュタインの言葉だそうである。敢えて訳せば、「事実が理論に合わぬなら、事実を変えよ」か。ある工学書の冒頭に書かれていたのを読んだだけなので、アインシュタインがどういった文脈でこの言葉を発したのかは知らない。時間と空間の認識を大きく変えたと言われる特殊相対性理論について、ユーモアを交えて語ったのだろうか?

この言葉を思い出したのは、内藤多仲の設計理論を読み返している時であった。

内藤の設計理論が、「間仕切りの入ったトランク」からヒントを得た話は有名だが、建物を施工する際に、壁と床(あるいは屋根)が一体となっていることが重要であると内藤は言っている。こうすることで、変形が抑えられて建物が耐震的になるからだが、別の理由として、実際の建物の水平力の流れが計算で想定した通りとなる、ということもあるのだ。

内藤の「日本の耐震建築の変遷」という講演の記録が残っているが、その中にも以下のような言葉がある。

「床が一枚盤で出来ておれば、開口ある架構も壁架構も地震力による変形が同一であるべきだと云う条件から力の分担比すなわち横力分布係数が解明出来るから、これによって骨組の設計も出来、変形量も分かるのである」

今で言うところの“剛床仮定”が成り立つように作れば、各壁の水平力の分担が計算できて、変形も正しく予測できるというわけである。

実物を理論に歩み寄らせて、両者に齟齬を生じないようにするという発想は、実務に疎く、机上の理論ばかり追いかけていた筆者には新鮮であった。



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2013
11.30

剛構造とは?

Category: 用語
内藤多仲に触れた序でに、“剛構造”という用語について書いておきたい。

柔剛論争の話の際に出てくる剛構造とは、層剛性や建物全体の剛性が大きい構造を指しているが、先日引用した「日本の耐震建築とともに」などによると、内藤多仲はもう一つ別の意味で“剛”という言葉を使用している。

それは、今日の剛床仮定等で問題となる“剛”であり、水平構面の一体性に関するものだ。この剛性も耐震や耐風といった水平力への抵抗の検討において重要な因子である。現在では、筆者の持つ印象だが、日本よりもアメリカでこの剛性(diaphragm flexibility)の検討は詳細に行われているようだ。

また、英語で rigid frame と言うと、我々の言うところのラーメン構造を意味する。つまり、柱と梁が剛節されたモーメント抵抗系のことである。ラーメン構造は、剛構造もあれば柔構造もある。英語の文献を読む時には、rigid frame = 剛構造ではないことに注意しておきたい。

参考文献:Reitherman R : International Aspects Of the History of Earthquake Engineering


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2013
11.27

耐震設計への道を拓いた男:アルトゥーロ・ダヌッソ (11)

Category: 建築構造史
ダヌッソに(少しだけ)関連のある日本語の本を一つ見つけたので、紹介しておきたい。といってもこの本はとっくに絶版となっているのだが。

内藤多仲の「日本の耐震建築とともに」の中に「五. 地震と日本の建築、外国の建築」という章があり、ミラノにあるジオ・ポンティ(Gio Ponti)設計のピレリービルの写真が出ている。ダヌッソは、このビルの構造設計に関わっているのである。

この写真の説明には、“ミラノのピレリービル:設計ジオ・ポンティ、32階ヨーロッパ最高 126m、軽量コンクリート使用”とあってダヌッソの名は出ていない。

本文中では、この写真について何も触れられていない。イタリアには地震があるといっても、回数は日本と比較にならないほど少ない、という内容であるから、イタリアの地震の少なさを示す目的で、高層ビルであるピレリービルの写真を載せているのだろう。

ピレリービルは、1958年竣工の断面が扁平な六角形をしたファサードの美しいビルである。イタリアの高層ビル事情を知らないが、この時代に既にコンクリート(軽量だが)で高層ビルが作られているのは意外であった。

日本語の本ではないが、南カリフォルニア大学のSchierle氏の出している「Structures in Architecture」(構造家のサルバドーリにも同じ名前の本がある)p.17-3にもピレリービルが絵入りで載っていて、こちらにはダヌッソの名前がちゃんと出ている。この本は、図や絵が豊富で楽しく読める。


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