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2014
03.29

名前のない地震(末広恭二のアメリカ講演より)

Category: 地震工学史
近現代に発生した地震の中から人々に記憶される地震を選ぶとすると、以下の3つのものが真先に挙げられるだろう。

  1923年9月 1日 関東地震
  1995年1月17日 兵庫県南部地震
  2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震

死者数から言うと、これに明治三陸地震を加える必要があるかも知れない。

建築構造という専門的な観点から見ると、これらの地震以外にも重要な地震は多くある。例えば、RC構造が専門の人であれば、1968年の十勝沖地震を、"短柱のせん断破壊"というキーワードと共に思い浮かべるかも知れない。

こういったものの他に、地震工学、耐震工学の歴史的観点から見ると、専門家にもあまり知られていない地震でも、興味を引かれる地震が幾つか見つかる。

本稿で取り上げる地震もその一つであるが、調べてみても名前さえ付けられていないようなので、そのマイナー度はかなり大きいと思われる。この地震は、"Engineering Seismology"と題した末広恭二のアメリカ講演(3つあるうちの2番目のもの)で紹介されているものである。

この講演の要点は、地震が建物に及ぼす影響を知る第一歩として、地面の加速度を直接記録することが重要であると説いているところにある。

そのため、変位を記録する地震計(seismograph)の記録から計算した加速度が、加速度計(accelerograph)の記録と大きく異なっており、物理的な意味をほとんど有していないということを、実際に得られたいくつかの記録を示しながら説明している。

ちなみに、"地震計の記録から計算"とは、波形から変位の最大振幅と周期を読み取って、振幅×(2π/周期)^2から加速度を出すというものである。つまり、地面の動きは sine や cosine であると仮定しているのである。

地震計と加速度計の結果の比較例として、以下の4つの地震の際に採れた記録が示されている。

  1. 1930年8月20日 Tokyo Earthquake
  2. 発生年月日不明の地震
  3. 1931年6月17日の激しい地震
  4. 1931年9月21日 西埼玉地震

1番目の地震は、Tokyo Earthquake と書かれているが、正式に何と呼ばれるのか、調べてみたがはっきりしない。2番目の地震は、"ある地震(an earthquake)"としか書かれていない。説明の順番からすると、1番目と3番目の間の期間に採れた記録だと予想される。1と2の地震の揺れは小さいが、3は、最大加速度が50(gal)弱、4は100(gal)弱と、決して小さな揺れの地震ではない。

加速度記録は、全て石本巳四雄の開発した石本式加速度計によるものであるが、1番目のものが光学式記録であるのに対し、3、4番目は(おそらく2番目も)機械式記録である。

光学式、機械式の原理については、日本建築学会から出ている「建築構造物の振動実験(昭和53年)」の"2.2.2 機械式振動計・光学式振動計"などに詳しい説明があるので参照されたい。大雑把に言うと、光学式では鏡を使って揺れの記録を拡大して感光紙などに記録し、機械式ではアームに付けたペンによって記録する。

石本式(水平)加速度計の作成された年として1931年を挙げている文献が多いが、1番目の地震の記録があることからも、少なくとも1930年8月以前には作成・設置されていたことになる。ただ、加速度計は目的に応じて改良されていったようなので、初期のものは試作機(今風に言うと(?)ベータ版)であって、正式なものが1931年に公表されたのかもしれない。

講演の記事では、3番目の地震について以下のように書かれている(拙訳)。

「これらの加速度計が我々の研究所に設置されたのは、少し前(1923年の関東大地震の余震が被災地域の周辺域で頻繁に発生していた頃)に過ぎないが、2つの極めて激しい地震(quite severe earthquakes)に関して有益な情報を得ることに成功している。1つは、1931年6月17日に起きた震源が東京の北方約40kmの激しい地震(severe earthquake)であった。」

(中略)

「地球物理学者が用いる地震計から得られた記録を基に、経験豊富な地震学者が推定した同地震の最大加速度は25 galで周期は2.1秒であった。しかし、実際はと言うと、加速度計の記録を静的及び動的に注意深くキャリブレートしたものでは、地震動NS成分の最大加速度は約43 gal、周期は0.4秒であった。」

この地震を気象庁の過去の地震データベースで調べてみると、マグニチュードは6.3、最大震度は5であったことが分かる。Severe earthquakeなのだから、○○地震と呼んでもよさそうだが、名前は付けられていないようである。

4番目の地震は、西埼玉地震である。これについては、以下のように書かれている。

「我々の研究所で加速度の記録に成功したもう一つの地震は、1931年9月21日に東京の北方約60 kmの北武蔵にある秩父山の辺りで発生したものである。この地震はかなり破壊的な(semi-destructive)ものであって、震源に近く地盤が硬質な古生層からなる地域では犠牲者の報告は無かったものの、沖積地域では16人の死者と76戸の家屋の倒壊を生じた。この地震によって東京では非常に激しい揺れを生じたが、低地(low ground)の道路に亀裂を生じた少数の例を除けば、深刻な被害は起きなかった。」

「この地震の加速度記録を Fig. 36に再現して、大森式強震計による地震記録(Fig. 37)と比較している。この地震の起きた日は暖かったことから、加速度計のオイル減衰はやや不十分であったことを付言しておくが、描画記録が信用できない程ではなかった。加速度の東西成分は、約70 galで周期は約0.4秒であることが分かる。しかし、地震記録の方は、主要動において約3.5 cm.地面が動いたこと以外は何ら有益な情報を与えてくれない。」

東西成分の最大は、約70 galであるが、南北と合成したものは 70 ~ 90 galということがこの後に書かれている。

末広の講演が、1931年の11月、12月であるから、"取れたてホヤホヤ" の記録を携えてアメリカに乗り込んだことが分かる。



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2014
03.26

M付きとM無し(単位系の話)

Category: 構造設計
前回、ACI コードに触れたついでに、ACI コードなどにおける単位系の話を書いておきたい。

半年くらい前だったか「MIT白熱教室 ガリレオは本当に正しいのか?」というテレビ番組で、老教授が重力やエネルギー保存則をテーマにした実験を大講義室の聴衆の前でやってみせているのを面白く拝見した。

その中で、重力によって背丈がどれくらい変化するのか測ってみようと言って、聴衆から被験者と計測者を選んで壇上で実演した(横になった状態と立った状態で被験者の背丈を計った)のであるが、その際に「誰かこの中にメートル法が読める人はいるかな?」と計測を担当する有志を募っていた。

ある学生が、「メートル法が読めます」とはりきって壇上に上がったのはよかったが、おもいきり読み間違えて「君は本当にメートル法が読めるのかね?」と老教授につっこまれ、会場の笑いを誘っていた。

これを見ても分かるように、アメリカではメトリックよりもフィートやポンドが今でも根強く使用されているようだ。尺貫法を捨てた我々とは対照的である。AISC、ASCE、UBC、IBC、FEMA などのアメリカの設計コードを見ても、フィートポンドとメトリックが併記されているが、あくまでフィートポンドが主であって、メトリックは括弧内に記載される立場である。

コンクリートの設計コードであるACI 318のコードブック(Building Code Requirements for Structural Concrete)では、1冊に2つの単位系が併記されているのではなく、使用単位系ごとに別冊になっている。タイトルの"318"の後にMが付いているかいないかで見分けることが出来る。

例えば、2008年版ならば、ACI 318-08がフィートポンド単位、ACI 318M-08がメトリック単位に対応している。メトリック版の方には、Appendix に SI-metric、mks-metric、U.S. customary units の3つの単位系それぞれの設計式が示されている。(U.S. customary units という呼び方で、イギリス系のフィートポンドである imperial と区別される)

注意したいのは、設計式中の係数の値は、単位変換の際にきりのいい値に丸められていることである(恐らく元になっているのがフィートポンド単位で、メトリック単位用の式はフィートポンドから変換されたものと思われるが、これはあくまで推測)。

であるから、どちらかの単位系の設計式で計算しておいて、別の単位系で評価するために、最後に正確な変換係数を掛けても、別単位のコードブックの与える結果にはならない(微妙にずれる)のである。日本の設計規準でも、工学単位からSI単位への変換、あるいはその逆を行う際には同じことが言える。

フィートポンドと書いたが、foot-pound であるから、フットポンドと書く方が正確なのかもしれないが、フットポンドでは耳に馴染まないので、フィートポンドとしておく。


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2014
03.22

フランジとは?

Category: 用語
麦わら帽子の"つば"のことを英語では flange と呼ぶが、flange という語を Oxford Advanced Learner's Dictionary で調べると、以下のように説明されている。

Flange : an edge that sticks out from an object and makes it stronger or (as in a wheel of a train) keeps it in the correct position

このように、フランジという語は、あるものから"飛び出した部分"を表していることが分かる。この辞書の説明の後半は、電車の車輪フランジについて言っているが、建築構造の分野でフランジと言えば、H 形鋼のフランジがまず思い浮かぶ。建築学用語辞典には、以下の説明がある。

フランジ : H 形や I 形の断面で張り出している板部分、または管の外周に張り出しているつば状の部分。

これ以外にも、アメリカのコンクリート設計コード ACI 318 などを読んでいると、flanged sections という言葉に出くわすことがあるが、これはスラブの一部をはり断面と見なす T 形はりや L 形はり(見た目は逆 L 形だが)の断面を意味する。

もう一つ飛び出した部分といって思い出すのは、基礎のフーチングであるが、これを flange と呼んでいる英語の文献には今のところ出会ったことはない。Overhang という表現が使われているものなら何度か見たことがあるので、どうもフーチングに対しては flange とは言わないらしい。


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