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2014
08.29

震度0.1にまつわる話

Category: 地震工学史
関東大震災の翌年の1924年、市街地建築物法施行規則に水平震度0.1が規定され、1950年までの約25年の間、設計震度0.1による許容応力度設計の時代が続く。この「震度0.1」が決められた経緯については、構造が専門の人ならどこかで耳にしたことがあるかもしれない。

だが、末広恭二によると、この値は「科学的根拠の無い、いわば方便に過ぎないもの」ということになる。震度を決めるには、地震の際の地動加速度が分かっている必要があるが、その点が全く不十分なまま法令で決められてしまった。地動加速度の正確な測定を目標として研究に取り組んでいる身からすれば当然の意見かもしれない。

末広のアメリカでの3番目の講演は "Vibrations of Buildings in an Earthquake" というタイトルで、その内容は今で言うところの SSI(Soil Structure Interaction) がテーマである。このイントロダクションで、末広はアメリカ人に日本の耐震設計法を紹介しながら、「震度0.1」には科学的な根拠があるのではないと述べている。

以下にその部分を示そう(拙訳)。

「日本では重力加速度の少なくとも1/10の水平地震加速度を考慮する必要がある。この加速度の水平力が風圧の場合と同じように強度計算で考慮されるが、この時の水平力は構造部材の重量に比例し、構造物のあらゆる部分に作用するという点が異なる。このため、耐震建築物の構造部材の断面寸法(scantlings)を単純な方法で決定できるように思える。」

「ところが、よく考えてみると、問題は初めに思ったほど単純では無いことに気が付く。まず、規定された最大地震加速度の強さは、強度計算の基礎を成すものだが、これが勝手に決められた量(an arbitrarily assumed quantity)に過ぎないのだ。この地震強さは、過去の経験から決められたものでも将来の発生可能性から決められたものでもない。恐らく、1/10という数字から計算される部材サイズが大抵の場合ほどほど(moderate)となることを知っているので、使い勝手がよいからである。」

「この地震係数は、2番目の講演で述べたように、1923年の関東地震の時に東京の台地における主要動の初めにこれ位の加速度を生じたらしいことが曖昧な方法で知られている以外は、十分に科学的な裏付け無くして採用されたものであるが、実際の加速度強さはそれよりもやや大きめであったと信じるだけの根拠がある。」

「破壊的な地震(destructive earthquake)の本当の強さを決定できるようになるまでは、実用上の観点を除いて、この地震係数の使用が適切であるかどうかを明言できる立場にない。このため、喫緊の問題は、次に激しい地震が来た時に、その強さを測定できるように備えておくことである。」

「1/10という数字は使い勝手がよいからだ」といった理由は、震度0.1の背景について書かれている他の文献には見られないものである。かなり批判的な目で見ていることが伺えるが、このように述べてはいるものの、末広恭二も震度0.1が法令に規定された重要な場面にちゃんと立ち会っているのである。これについては後日。


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