FC2ブログ
2018
01.28

斜め方向の強制変位を受ける片持ちはりのようなもの(その3)

Category: 構造解析
前回、前々回の記事では、以下に示す 4 ケース(再掲)のうちケース 1) とケース 2) を採り上げた(u'2、v'2 は、それぞれ x'、y' 方向の変位、X'2、Y'2 は、それぞれ x'、y' 方向の力)。

変位 u'2 を規定、変位 v'2 を規定 ( ケース 1) 前々回示したもの)
変位 u'2 を規定、 力 Y'2 を規定( ケース 2) 前回示したもの )
 力 X'2 を規定、変位 v'2 を規定( ケース 3) )
 力 X'2 を規定、 力 Y'2 を規定( ケース 4) )

今回は、ケース 3) とケ ース 4) についてである。

ケース 3) で v'2 = 0 なら、ケース 1) の時と同じく「斜面上のローラー支持」を想定していることになる。ケース 1) の時と違うのは、斜面に沿う方向( x' 方向)に変位を規定するのではなく、力(記号を P としておく)を与えるのである。


specified_disp_3_fig1_2.jpg


X'2 = P、M'2 = 0、v'2 = 0 である時の節点力ベクトルと節点変位ベクトルは以下となる。

specified_disp_3_fig2.jpg

これを {F'} = [T][K][T]T{d'} に代入して、未知量である u'2 と θ'2 に関する第 4 行と第 6 行を書き出すと、

specified_disp_3_fig3.jpg

前回の表記に合わせて、荷重べクトルを右辺に持ってくるなら、

specified_disp_3_fig4.jpg

これを以下のように書く。

specified_disp_3_fig5.jpg

これより、

specified_disp_3_fig6.jpg

のように {x} が求まるのは前回と同様である。

節点力ベクトルの未知成分を求めるために、{F'} = [T][K][T]T{d'} の 1、2、3、5 行を書き出すと以下となる。

specified_disp_3_fig7.jpg

y'2 方向反力にあたる Y'2 を書き下すと、

specified_disp_3_fig8.jpg

先に求めておいた {x}( u'2 と θ'2)をこの式に代入すれば、反力 Y'2 が求まる。

P に適当な値を代入して Excel で計算した結果を以下に示す。

specified_disp_3_fig9.jpg

節点 2 における全体座標系での節点力ベクトル(X2, Y2, M2)の結果から、はり端(節点 2) は下図に示すように、ほぼ x 方向に力を受けることが分かる。


specified_disp_3_fig10.jpg


はり端に x' 方向に力を与えても y' 方向に反力が発生するので、それらの合力べクトルの方向は x' 方向を向くとは限らないのである。むしろ部材の剛性のために x' 方向からはずれてしまう。これは、強制変位を与えたケース 2) の時と同様な現象である。

最後にケース 4) であるが、これは材料力学や構造解析の本などに普通に出ている類の問題である。ただ、x' 方向に荷重を作用させるということは、暗黙に y' 方向の力はゼロに規定していることに注意したい。つまり、ケース 4) の「変位バージョン」は、ケース 2) ではなくて、並進 2 自由度とも変位を規定するケース 1) の方である。

以上見てきたように、強制変位を与える場合も力を与える場合と同じであって、解き方や結果の性質が変わるわけではない。作用方向が"斜め"である場合も、ローカル座標系を導入するなどの処理が必要になるが、強制変位と力を与える場合とで本質的に何ら変わりはない。

ただ、違いがあるとすれば実際との対応である。ケース 1)、3) は斜面上のローラー、ケース 4) は自由端が対応する。 ケース 2) の境界条件については、前回も書いたように筆者は実際上の例を思いつかないが、このような設定が必要となる場面もあるのかも知れない。



スポンサーサイト
Comment:0  Trackback:0
2018
01.18

斜め方向の強制変位を受ける片持ちはりのようなもの(その2)

Category: 構造解析
前回は「斜面上のローラー支持」を表現すべく節点 2 の並進変位二成分を規定した( u'2 = δ、v'2 = 0 )。通常、境界では荷重か変位のどちらかを規定するので、並進自由度に関して以下のような 4 つのパターンが考えられる。

変位 u'2 を規定、変位 v'2 を規定 ( ケース 1) 前回示したもの)
変位 u'2 を規定、 力 Y'2 を規定( ケース 2) )
 力 X'2 を規定、変位 v'2 を規定( ケース 3) )
 力 X'2 を規定、 力 Y'2 を規定( ケース 4) )

回転変位を拘束するか否かというバリエーションもあるが、話が面倒になるだけなのでここでは採り上げない。節点 2 では常に力 (モーメント) M'2 = 0 を規定することにして、まずはケース 2) について見てみよう。

3 自由度の規定を、u'2 = δ、Y'2 = 0、M'2 = 0 とすると、節点力べクトルと節点変位ベクトルは以下のように書かれる。

specified_disp_2_fig1.jpg

変位を求める上での未知量は 2 つだけなので、手で解くこともできる。{F'} = [T][K][T]T{d'} に代入して、未知量である u'2 と v'2 に関する第 5 行と第 6 行を書き下すと、

specified_disp_2_fig2.jpg

第 1 項を移行して、

specified_disp_2_fig3.jpg

これを以下のように書く。

specified_disp_2_fig4.jpg

これより、

specified_disp_2_fig5.jpg

のように {x} が求まる。

前回と同じ片持ちはり(のようなもの)を対象に Excel で解いた結果は以下の通り(ここでは逆マトリックスを使って解いているが、数値計算で連立一次方程式を解くのに通常は逆マトリックスを求めたりしないことに注意されたい)。

specified_disp_2_fig6.jpg

解として求まった {x} からローカル座標系における節点 2 の変位ベクトルが決まる。それに変換マトリックス [t]T を掛ければ、全体座標系での変位ベクトル(u2, v2, θ2)が求まる。

これを見ると、u2の値はゼロに近くて、v2 は 14(mm) ほどとなっている。つまり、変位ベクトルは下図のようにほぼ真上( y 方向)を向くことになる。この結果は予想外と思われるかもしれない。


specified_disp_2_fig7.jpg


はり端は実線の矢印の方向に変位を生じる。実線の矢印の x' 方向成分の大きさが δ である。前回の例が " x' 方向に 10(mm) の変位" を強制しているのに対して、今回のは " x' 方向の成分が 10(mm) の変位" を強制しているのである。言葉で書くと似ているようでも結果はかなり違ったものとなる。

このように、並進自由度の一方のみの変位を規定すると、もう一方の自由度の変位は剛性方程式の解として求まることになるので、変位ベクトルがどちらを向くかは式を解いてみるまでは分からない。

今回のような規定の仕方が実際上どのような状況に対応するのか筆者にはよく分からない。ただ、もし変位ベクトルが x' 方向を向くような強制変位を想定するのであれば、前回のような規定方法を採用しなければならない。

ちなみに、変位ベクトルの向きは軸剛性と曲げ剛性の関係で決まってくる。前回のケース 1) のように x' 軸方向に変位ベクトルが向くこともあり得る。v'2 = 0 としてそのような条件を求めると、

specified_disp_2_fig8.jpg

が得られる。a = 45°の場合、この比の値は 3 となる。手っ取り早くこの条件を満たす諸元としては、L = 50(mm) がある(断面のせいや幅よりも部材の長さの方が短い非現実的な部材なので、曲げ問題を解く上では不適切なものであるが)。

さて、ケース 2) のように結果のベクトルが"予想外"の方向を向くのは、変位を規定する場合に限った話ではなく、力を与える場合も同様である。それについてはまた後日。。。



Comment:0  Trackback:0
2018
01.14

斜め方向の強制変位を受ける片持ちはりのようなもの(その1)

Category: 構造解析
平面片持ちはりの先端に斜め方向に強制変位 δ を与える問題を考えてみよう。


specified_disp_fig1_2.jpg

本記事のタイトルに "のようなもの" と付けたのは、変位を規定する場合も片持ちはりと言ってよいか自信がないからである。例えば、変位をゼロに規定する場合を考えると、その向きに動かないように拘束していることになるので、もはや "片持ち" ではない。。。

"のようなもの" は、この一抹のためらいを表現しているのである。ニュースでよく聞く "バールのようなもの" を真似たわけではない。

一方、"斜め方向" や "強制変位" には実はあまり必然性はない。力学における境界の問題を単にそういう切り口で見てみようというだけのことである。

以下での議論のために、上図に示すように全体座標系 (x, y) とローカル座標系 (x', y') を設定する。プライムは微分ではなくてローカル座標におけるものを表していることに注意されたい。

下図に示す軸力と曲げを考慮した平面部材要素を用いてこの問題を解くことにしよう。E、A、I、L は、それぞれ、ヤング率、断面積、断面二次モーメント、部材長さである。左端を節点 1、右端を節点 2 とする。


specified_disp_fig2.jpg


要素両端の節点力 (X, Y, M) と節点変位 (u, v, θ) の関係は、大抵の有限要素法の本に出ている通り以下のような式で与えられる。

specified_disp_fig3.jpg

これを以下のように書く。

specified_disp_fig4.jpg

定式化の方法は幾つか考えられるが、節点 2 の節点変位と節点力をローカル座標系で表す方針で進めていこう。ローカル座標系での節点変位ベクトルを全体座標系での節点変位ベクトルで表すと以下となる。

specified_disp_fig5_2.jpg

節点 1 は変換の必要は無いので、節点 1、2 を纏めて書けば、

specified_disp_fig6.jpg

ここに、[I] は 3×3 の単位マトリックス、[0] は 3×3 のゼロマトリックスである。これを以下のように書く。

specified_disp_fig7.jpg

両辺に左から [T] の逆マトリックスをかければ、

specified_disp_fig8.jpg

ここで、[T] は直交マトリックスなので、逆マトリックスは転置マトリックスに等しいことを利用している。

節点力についても同様に、

specified_disp_fig9.jpg

これらを最初の式( {F} = [K]{d} )に代入すると、

specified_disp_fig10.jpg

両辺に左から [T] をかけて、

specified_disp_fig11.jpg

が得られる。

ここから Excel にでも頼って計算を進めると楽だが、もう少し辛抱して手計算を続けよう。[T][K][T]T をゴリゴリと求めると以下となる。

specified_disp_fig12.jpg

x' 軸方向に変位する場合の境界条件は、回転がフリーなら下図のような斜面上のローラー支持に対応する。このような傾斜支持の条件は実際問題として時に出くわすものだと思う。


specified_disp_fig13_2.jpg


斜面と直交する方向( y' 方向)は拘束(変位ゼロに規定)される。つまり、u'2 = δ、v'2 = 0 であり、全体座標系で書けば、u2 = δcos a、v2 = δsin a である。この場合をケース 1) としておく。

節点 2 における 3 自由度の規定は、u'2 = δ、v'2 = 0、M'2 = 0 となり、節点力ベクトルと節点変位ベクトルは以下のようになる。

specified_disp_fig14.jpg

これを、{F'}=[T][K][T]T {d'} に代入して解けばよい。変位を求めるだけなら、未知量は θ'2 の一つだけなので解くのは容易である。第 6 行目の式だけを書き下すと以下となる。

specified_disp_fig15.jpg

これを解いて以下を得る。

specified_disp_fig16.jpg

部材の断面を幅 b、せい D の矩形断面として適当な部材諸元を設定し、適当な値(δ = 10 mm、a = 45°)を代入して Excel で計算を行った結果を以下に示している。

specified_disp_fig17_2.jpg

以上が"斜面上のローラー支持"を想定して強制変位を与えた場合(ケース 1))の結果である。別の境界条件とした場合については後日。。。



Comment:0  Trackback:0
back-to-top