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2018
06.25

解析誤差のはなし

Category: 構造解析
先日の片持ちはりの問題では、はり部材を1要素でモデル化した。この例では1要素だけでも正解(厳密解)が求まる(あくまでもベルヌーイ・オイラーの仮定に基づく"はり理論"での正解だが)。

もっと精度を上げるために要素数を100まで増やそうとは誰も思わないだろうが、1要素で十分な理由については初歩的過ぎて忘れてしまっている人も多いのではないだろうか。今回はこの辺りについて復習してみよう。

片持ちはりの例では軸と曲げの両方を考える必要があったが、ここでは話を簡単にするために下図のようなフツー(均質で等断面)の棒を引張る問題をまずは考える。

analysis_error_fig1.jpg

有限要素法(変位法)で問題を解くので、長さ L の棒を1つの要素として、要素の始端を i 節点、終端を j 節点とし、i 節点から j 節点の向きに x 軸をとり、軸変位を u と書くことにする。そして、要素内変位 u(x) を x の一次式として以下のように表す。

analysis_error_eq1.jpg

軸ひずみ ε はこれを微分すればよいので、以下のように要素内で一定となる。

analysis_error_eq2.jpg

棒の断面積を A、ヤング率を E、軸応力を σ(引張を正) と書くことにすると、両端の軸力 Ni、Nj は、

analysis_error_eq3.jpg

ベクトルとマトリックスの形で書けば、

analysis_error_eq4.jpg

始端固定(ui = 0)、終端に外力 P が作用する(Nj = P)条件から、

analysis_error_eq5.jpg

となり、これを解いて

analysis_error_eq6.jpg

が求まる。

これが正解になっていることを確認するには、材料力学で学んだ棒の釣合い式を変位で表現してみればよい。長さ L の棒の一部を切り出して作用する力を書き込むと下図のようになる(ちなみにこの図は free body 図と呼ばれる)。


analysis_error_fig2_2.jpg

部材には分布荷重が作用し、部材断面積は長さ方向に一様ではないという、上記の例よりも一般的なものを想定した図としている。図中の N は軸力、px は単位長さあたりの分布荷重である。力の釣合いより、

analysis_error_eq7.jpg

これを整理して以下を得る。

analysis_error_eq8.jpg

N = σA、σ = Eε、ε = du/dx であるから N = EA du/dx である。これを代入すれば、変位で表現した釣合い式が以下のように得られる。

analysis_error_eq9.jpg

px として自重などが考えられるが、もし px = 0 で軸剛性 EA が x に依らず一定であれば、釣合い式は、

analysis_error_eq10.jpg

となる。この微分方程式を解くと、

analysis_error_eq11.jpg

C1、C2 は積分定数である。x = 0、x = L での変位をそれぞれ u0、uL とすると、C2 = u0、C1 = (uL - u0)/L が求まる。これより、変位 u は以下となる。

analysis_error_eq12.jpg

これは先の有限要素法(変位法)のアプローチで部材を1要素として要素内変位を x の一次式に置いた場合の式と一致する。つまり、先のアプローチで仮定した変位は釣合い式を満足するのである。

その他の支配方程式で乱されるものが無いことはこれまでの展開から明らかだから、正解が求まることが了解されるかと思う。

逆に言うと、もし分布荷重が作用したり軸剛性 EA が一定でなかったりする場合に同じアプローチを取るならば、得られる解はもはや正解ではないことになる。分布荷重は等価節点力として処理されるので構造全体としての釣合いが乱れるわけではないが、解くべき方程式がすり替わっていることに注意したい。

曲げの場合も同様で、記号や符号の説明は省略するが、たわみを w として元々の釣合い式は、

analysis_error_eq13.jpg

であり、分布荷重がゼロで曲げ剛性 EI が一定なら、

analysis_error_eq14.jpg

である。これを積分してたわみは 3 次多項式となる。もし分布荷重が作用したり曲げ剛性 EI が一定でなかったりする場合に 3 次のたわみを用いるなら近似解しか得られないのである。

以上のことは、文献 1 に書かれている曲げ問題の内容に軸問題を追加して多少アレンジして書いたまでである。興味のある人は、文献 1 の"5-5 変位法の簡単な応用例"を参照されたい。該当部分を以下に書き写しておこう(p.75)。

... 本節に説明した変位法による FEM は、正解ではなく、近似解を与えるものであることを付言しておきたい。このことは1つの要素内の we(x) を式 (5.73) のような三次式で近似していること、および分布外荷重 p(x) を等価節点力で置換していることからも明らかであろう。

このように分布外荷重を等価節点力で置換し、はり要素のたわみ形としては外荷重が零の場合のたわみ形を用いるため、このような FEM で得られた曲げモーメントやせん断力は節点で不連続となるのが一般的である。...

とは言っても、有限要素法(変位法)のアプローチは広く用いられているわけだし、今回のようなことは特に気にしなくてもよいのでは?と思われるかもしれない。実際、多くの人は気にしていないと思う。

だが、とある有限要素法の碩学は著書の中で今回のことを敢えて採りあげている。そういった例は他の本ではあまり見かけないが、新しい視点を得るのに有意義と思われるので、後日それを紹介しよう。


参考文献

  1. 驚津久一郎 : エネルギ原理入門 有限要素法の基礎と応用シリーズ3 培風館 1980年




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