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2015
07.14

サン・ブナンの定理?

Category: 建築構造史
先日の記事に書いた「グリーンの定理」を読んで、「これってモールの定理では?」と思った人もいるのではないだろうか。内藤多仲の「建築構造学 第10版」(1971年)ではこれらを区別して扱っているが、「グリーンの定理」のことをモールの定理と書いてある本も結構あるようだ。

例えば、これも古い本だが、鷹部屋福平の「架構新論」(1928年)の第二編の"II. モール氏法則と其拡張"では、

撓角撓度法の基礎的理論として有名な Mohr 氏の定理は次の様なものである。

との後に「グリーンの定理」の説明がある。

ティモシェンコの History of Strength of Materials を見ると、モールが "モールの定理" を用いて、微分方程式を積分することなくはりのたわみを求める方法を見出したとある(Chapter IX Strength of Materials in the Period 1867-1900, "60. The work of O. Mohr")。

さらに同書には、サン・ブナンが「グリーンの定理」と全く同じ方法で片持ちはりのたわみを求めていたことについても書かれている(Chapter VI Strength of Materials between 1833 and 1867, "32. Saint-Venant's contributions to the Theory of Bending Beams." )。

st_v_fig_2.jpg

サン・ブナンは、微分方程式を積分することなく、片持ちはりのたわみを初等的な方法によって計算できることを示し、今日面積モーメント法と呼ばれる方法を導入している。

たわみ nn1 は、たわみ曲線の要素 mm1 の曲率に相当し(Fig. 86)、

st_v_eq1.jpg

である。ここで、任意断面の曲率が

st_v_eq2.jpg

に等しいことから、サン・ブナンは、たわみについて以下の表現を得ている。

st_v_eq3.jpg

必要となる積分は、曲げモーメント図を表す三角形の面積モーメントとして計算可能である。サン・ブナンは、同様な方法で一様分布荷重によって生じるたわみを見出している。

文中の Fig. 86 は上に示した図である。原文は以下の通り(式は省略)。

Saint-Venant shows that the deflection of a cantilever can be calculated in an elementary way without integration of the appropriate differential equation and introduces the device which now is called the area-moment method.

The deflection nn1, corresponding to the curvature of an element mm1 of the deflection curve(Fig.86), is
 (上記第一の式)
Observing now that the curvature at any cross section is equal to
 (上記第二の式)
he obtains the expression
 (上記第三の式)
for the deflection. The required integral can be calculated as the statical moment of the triangle representing the bending-moment diagram. In a similar way he finds the deflection produced by uniformly distributed load.

上記の日本語訳では、statical moment を "面積モーメント" と訳しているが、これは「ティモシェンコ 改訂 材料力学要論」の前澤成一郎の訳に倣ったものである。だが、"面積モーメント法" の元の英語は area-moment method であるから、statical moment を面積モーメントと訳してしまっていいのかためらいも感じる。

「チモシェンコ 材料力学 上巻」の鵜戸口英善、国尾武の訳を見ると、単に "モーメント" と訳してあって、こちらに倣うのはもっとためらわれる。なので、すっきりしないけれど、前澤訳に倣うことにした。

History of Strength of Materials には、サン・ブナンがこの計算法を見出したのがいつであったかについては、はっきりと書かれていない。だが、サン・ブナンの活躍した時期を考えると、少なくとも C. E. グリーンよりも先であったと思われる。サン・ブナン、モール、C. E. グリーンの生まれた年と亡くなった年を示すと以下の通り。

サン・ブナン: 1797 - 1886
モール: 1835 - 1918
C. E. グリーン: 1842 - 1903

C. E. グリーンは、サン・ブナンよりも45年遅れて生まれているのである。であるから、この定理はグリーンの定理と呼ぶよりサン・ブナンの定理と呼ぶ方が適当と言えるかも知れない。

まぁ、○○の定理とか○○の法則などといったものは、言ったもん勝ち、広まったもん勝ちなところもあるので、ネーミングにこだわる必要はないのだろうけれど。。。

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