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建築構造学事始

余談の余談(零戦から鷲津久一郎まで)

前回書いた"撃墜王"こと坂井三郎氏の左旋回の話は、飛行機の本をたくさん書いておられる加藤寛一郎氏の「飛行の秘術のはなし」で読んだと記憶している。これも書き写して引用しようと思って本棚を捜したが、見当たらない。この本だけでなく飛行機関連の本が何冊か見当たらないのである。

そういえば、二年ほど前に零戦映画が話題になった頃、映画を見た知人が零戦について熱く語ってくるので、「飛行の秘術のはなし」などを見せて、"左捻りこみ"の説明が出ていることを教えたところ、それらの本を貸してほしいと持って行ってしまったのであった。

その本には、加藤氏が坂井氏を自宅に招いて零戦の飛行法について聞き取りをする話が出ていたと記憶している。二人でソファーに並んで座り、坂井氏がレクチャーする。加藤氏は、操縦桿の位置やその時のパイロットの体勢を実際に確認しながら説明を受ける。「ここで左旋回」と坂井氏が体を左に倒せば、それを真似て加藤氏も体を左に倒す。うろ覚えだが、確かそんなことが書かれていたと思う。

背面飛びでの説明に及んで、二人がソファーの上で逆さまになって合計四本の足を宙に上げたところに、お茶を持った加藤氏の御令室が戸を開けて入ってくる。この場面は結構笑えるのだが、あまりによくできているので、「ドラマ化でも狙って話を作っているのでは?」と(失礼ながら)思ったほどである。

ところで、加藤氏が企業を辞めて助教授として赴任した先で、これから飛行法(飛行術だったかな?)の研究をしたいと話すと、その研究室の教授が床を踏み鳴らして大激怒したそうである。その教授が誰であろう鷲津久一郎大先生なのであった。曰く「そんなものは、定年後に田舎の大学にでも行ってやれー。」(うろ覚えなので、表現は不正確かも)

鷲津久一郎と言えば変分原理(エネルギ原理)、変分原理と言えば鷲津久一郎である(Hu-Washizuの原理が有名)。夏目漱石の三部作ではないが、「エネルギ原理入門」「弾性学の変分原理概論」「Variational Methods in Elasticity and Plasticity」を鷲津の「変分原理三部作」と筆者は勝手に呼んで崇めている。

先日は鷲津久一郎の本の脚注について書いたが、上記の二番目の本の脚注では、鷲津久一郎自身が犯した学問上の誤りについて触れられている。これを読んだ時は「鷲津久一郎のような人でも間違えるのか」と少し安心したと同時に、そんなことを正直に書いておられることに心から敬服してしまった。


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