2016
01.04

地盤の柔剛論争?

Category: 地震工学史
あなたが家を建てるとしたら、どのような地盤の土地を選ぶであろうか?色々な制約はあるだろうが、事情が許す限り地盤の良い場所を選択するのではないだろうか。良い地盤とは、固く締まった地盤である。

無事に土地選びが終わったら、次は建物の設計だ。もしあなたに資金的な余裕があるなら、免震装置を備えた免震住宅とするのはどうだろうか?かなりの大地震が来てもゆっくりとしか揺れないので、家が大丈夫なばかりか心理的な恐怖を味わわずに済むかもしれない。

現在、ハウスメーカーなどが提供している戸建免震システムには様々なタイプのものがあるようだが、我が国初の免震建築である八千代台住宅では6つの積層ゴムが使用されている。

これらの積層ゴムは、建物と地面との間に置かれて柔らかい層を形成する。この層が地震時にゆっくり水平方向に変形して地震エネルギを吸収するおかげで、その上にある建物とそこに住む人の安全が守られるのである。

ここで、ふと疑問に思わないだろうか?「わざわざ固い地盤を選んだのに、なぜまた柔らかい層を作るのだ?だったら、初めから柔らかい地盤でよいのでは?」

また一方で「いやいや、軟弱地盤で地震の揺れが増幅されるのは常識中の常識だ」という考えも頭をよぎる。

トリファナック(Mihailo D. Trifunac)らによると、1994年のノースリッジ地震や、以前このブログでも取り上げたことのあるロング・ビーチ地震でも、"柔らかい地盤の免震効果"といってもよい事例(地盤の非線形応答による強震動加速度の低減)が観察されているそうである(文献1、文献3)。

前回見た通り、末広恭二も北武蔵地震と関東地震において、"地盤の降伏"によって軟弱地盤には緩衝効果があると思われると報告している。トリファナックらの研究も末広の考えを踏襲するものと言えるのかも知れない。

トリファナックらは、このような相反する軟弱地盤の効果を、"両刃の剣(two-edged sword)"であると言っている。下記は、トリファナックらの論文に対して R. Richards Jr から持ち掛けられた(吹っ掛けられた?)討論(文献2)への回答に見られる文である(拙訳と原文)。

軟弱な敷地の非線形応答による"自己免震"は、"両刃の剣"であることに異論はありません。しかし、我々は、うまく設計すれば、いずれか一方の刃を統計的に(例えば90%)回避するか、または本質的に排すことで、二刃を同時に一刃として働かせるようにすることが可能なはずであることを示しています。

We agree that "self-isolation" of soft sites, via nonlinear response is a "two-edged sword." However, we suggest that it should be possible, by clever design, to force the two "edges" to work one at a time, in such a way that the other "edge" is either avoided statically(e.g. 90 percent of time) or essentially eliminated.

さらに同回答中には、このような考えは古いものではなくて、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルにも見られるものであるとも書かれているが、これについては後日。


参考文献

  1. M. D. Trifunac and M. I. Todorovska : Nonlinear Soil Response - 1994 Northridge, California, Earthquake. Journal of Geotechnical Engineering, September 1996.

  2. R. Richards Jr : Discussion: Nonlinear Soil Response - 1994 Northridge, California, Earthquake. Journal of Geotechnical Engineering, October 1997.

  3. M. D. Trifunac : Nonlinear soil response as a natural passive isolation mechanism. Paper II. The 1993, Long Beach, California earthquake. Soil Dynamics and Earthquake Engineering 23(2003)



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