2016
06.14

真島健三郎のアプローチ その3

Category: 建築構造史
前回は、真島健三郎著「地震と建築」の附図一から五に示される「感応率時相曲線」のうち附図一について見た。前回の内容はあくまで筆者の解釈ではあるが、簡単に振り返りつつ補足しておくと、まず、地面の動きを

art127_eq1.jpg

の正弦波と仮定する。この地動を受ける非減衰 N 自由度系の r 次という特定モードの変位応答(地面から見た相対変位)が

art127_eq2.jpg

のように得られる。ここで、ω は系の r 次固有円振動数である。表記を簡単にするために、記号は柴田明徳著「最新 耐震構造解析」を使用している(以下に出てくる式も同様)。

地動の振幅を基準とする意味で a0 で割り、地面の変位も足し合わせれば、非減衰 1 自由度系の絶対変位応答が、

art127_eq3.jpg

のように得られる。前回の記事で筆者が excel を使って作成したグラフ中の赤色の曲線は、この式をセルに代入して描いたものである。「地震と建築」の附図中に点線で描かれる曲線に対応している。

附図二 IV は、共振時(Tr/T = 1)のケースであり、同様の曲線を描くには、それ用にちょっと処理(「最新 耐震構造解析」なら p.24 に説明されている)をしなくてはならないので一先ずとばすことにして、ここでは附図二 V(Tr/T = 1.25) を載せておく。

筆者が excel を使って描いたものも示しているが、両者はかなりよく一致しているのが分かる(ぴったりではないが、附図一 I, II 程外れているわけではない)。

「地震と建築」 附図二 V (Tr/T=1.25)
majima_fig2_V_original.jpg

majima_fig2_V.jpg

以下は余談。

今回示したようなグラフは、excel などを使えば容易に描くことが出来る。Tr/Tの比が何通りあっても、該当するセルの値を変えるだけでグラフの更新まで自動でやってくれる。

「地震と建築」が出版された 1930 年にはもちろんそんな便利なものは無いので、グラフ作成は面倒な作業だったと思われるが、真島健三郎はこのグラフをどうやって描いたのであろうか?

今回載せている図を見ても分かる通り、滑らかできれいな曲線である。とても手書きには見えない。当時既に、それがかなり素朴なものであったとしても、現代で言うプロッタのような機械があったのだろうか?

それとも、どの世界にも常人がとても及ばない技を身に着けた凄腕職人と呼べるような人がいるように、曲線描画請負業みたいな職業があって、その道のプロに描いてもらったのであろうか?

実際にどうだったのかは不明だが、筆者はこのグラフは真島健三郎自身が描いたものではないと推理している。それは、きれいな曲線でありながらよく見るとヘンなところがあるからである。以下を見て頂きたい。

majima_fig2_IV_zoom.jpg

附図の原点付近を拡大したものである。実線はサインカーブである。周知のとおり、θ → 0 で sinθ/θ → 1 であるから、この曲線は原点付近の傾きが正しく描かれていないことが分かる。

幾ページにもわたって振動論の式を展開して見せる真島健三郎のような人が、サインカーブの描画時にこのような無頓着を発揮するとは考えにくい。それで別の人に描いてもらったと推理するわけだが、実際はどうだったのだろう??



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