2016
07.14

柔構造論者が見ていたもの?

Category: 建築構造史
「軟弱地盤で地震の揺れが増幅されるのはなぜですか?」

難しい話はさておき、この問いに対する答えとして、以下のような説明を目にしたことがある。

即ち、建物でも剛体なら地面と同じ動きをするだけであるが、実際の建物は柔らかいので、建物自身の変形によって上階の方が応答加速度が大きくなる。柔らかい地盤もこれと同じ理屈である、と。

一見尤もな説明に思えるが、剛体という現実には存在しない究極に硬いものと比較するなら、実際の建物や地盤はどれも柔らかいことになりはしないだろうか。究極に硬いものと比較するのであれば、究極に柔らかいものとも比較しないと不公平である。

建物(地盤も)が柔らかくなるとどうなるか?地震による慣性力が作用する(地震力が上階まで伝わる)のに余計に時間がかかることになる。建物がさらに柔らかくなれば、作用するまでの時間はさらに伸びる。建物をどんどん柔らかくしていけば、慣性力が作用するまでの時間もさらに伸びていき、究極に柔かい状態では、無限に時間がかかることになる。つまり、力は作用しなくなり、建物は全く揺れないことになる。

究極に柔かい建物と比較すれば、実際の建物はどれも硬いわけだから、建物は硬いがために揺れが大きくなるという結論が導かれる。これは先に示したのとは正反対の(最近の言葉でなら"真逆の")結論である。

このところずっと振動論(の初歩)について見てきたが、振動論の解(建物の応答)は、自己振動(余関数)の部分と強制振動(特解)の部分で構成されている。柔構造を良しとする人たちは、このうちの強制振動(特解)の方に着目し、剛構造支持派は自己振動(余関数)の方を重要視しているという見方もできるのかもしれない。

自己振動においては硬く、強制振動に対しては柔らかく対処できれば都合がいいだろうが、そんな建物は存在しない。

いや、それに近いものが免震構造と言えるのかも知れない。周知の通り、免震建築は、柔かい層によって地震力をやり過ごすが、上部構造はなるべく変形しないように硬く作られるのであるから。

真島健三郎よりもダヌッソ(Arturo Danusso)やビオ(Maurice A. Biot)にこのような指向が見出せるように思うのだが、これについてはまた後日。。。


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