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2016
08.07

19世紀の振動論につても少し

Category: 建築構造史
真島健三郎の「地震と建築」をはじめ、20世紀前半に出版された振動理論を扱った文献に目を通していると、大抵の本でレイリー(Lord Rayleigh)について言及している部分に出くわすことになる。つまり、それらの文献の基礎的な内容の多くはレイリーの著作の内容を下敷きに展開されているのである。

「地震と建築」での例を挙げると、p. 26 に以下のような記述が見られる(旧漢字など一部の表記を変更。以下同様)。

... 本著の理論方面はなるべく今日の震動理論記述の一般方法によった次第であるから、素要ある読者には閲読に却って便宜であろうと思う。

しかし初心の読者には多少簡単に過ぎ難解の点がありはせぬかと思わるるも、震動理論の一般にわたる解説は適当の成書もあり、これを参照さるるが寧ろ便利であるから本著の解説はその目的に直接関する程度に止めて置いた。

著者は最も多く Lord Rayleigh の名著である Theory of Sound. を参照したことをここに特記して置く。読者もし理論の由来を一層深く究めんとするならばあわせて同書を一読せられん事を望む。

1924年(大正13年)の末広恭二の講演の記録:「構造物振動の理論及其測定法」にも幾つか出ている。以下は、「第一章 柱状体の横振動 (1)の(イ) 自由振動」の冒頭を書き写したもの。

一様なる柱状体の横自由振動は Lord Rayleigh や Horace Lamb の Theory of Sound に詳述せられて居りますから、ここにこれを述べるの必要はあるまいと思われますが、話の順序として二三の要点を摘出致します。

他にも挙げれば、物部長穂などもやはりレイリーを引用している。だが、不思議なことに同じヨーロッパにあったダヌッソ(Arturo Danusso)はレイリー的なアプローチを取っていない。文献1には以下のように書かれている(拙訳と原文を併記)。

... レイリー(1877)は、ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーを用いてラグランジュの方法で運動方程式を得た。これとは対照的に、ダヌッソは適合式を書き下すことによって式を導いていることから、ダヌッソはこの先達の業績を参考にしなかったようである。

... Rayleigh(1877) obtained the equation of motion using potential and kinetic energies, in a Lagrange approach. In contrast, Danusso gets his equation by writing a compatibility equation. Therefore, Danusso probably did not consider this precedent.


ダヌッソは例外的にレイリーを引いていないけれど、L. Sorrentino がわざわざ取り上げていることからも、当時参照されるものがあるとしたらレイリーがその筆頭ということになるのだろう。

以下は余談。

パスカルは数学史に残るような難問を歯の痛みを忘れるために解いたそうだが、レイリーも上記の The Theory of Sound を病気療養のために訪れたエジプトはナイル河畔のハウスボートの中で書き始めたそうである。体調不良が仕事をサボる格好の口実である身には耳の痛いエピソードである。

L. Sorrentino が振動論の文献としてもう一つ挙げているのが、トムソン&テイト(S. W. Thomson & P. G. Tait)の Treatise on Natural Philosophy である。この本は The Theory of Sound より 10 年早く出版されている。両者の出版年は以下の通り(日本では幕末から明治への大転換の時代である)。

1867年 トムソン&テイト: Treatise on Natural Philosophy
1877年 レイリー: The Theory of Sound


参考文献

  1. Luigi Sorrentino : THE EARLY ENTRANCE OF DYNAMICS IN EARTHQUAKE ENGINEERING: ARTURO DANUSSO’S CONTRIBUTION, ISET Journal of Earthquake Technology, Paper No. 474, Vol. 44, No. 1, March 2007




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