2016
08.16

レイリー法からレイリー・リッツ法へ

Category: 構造解析
レイリー(Lord Rayleigh)が The Theory of Sound に示した一次固有振動数(fundamental frequency)の式は、振動論の教科書で紹介されたり、設計基準に示されたりしているとはいえ、現代では実用上無くてはならないものとまでは言えないだろう。

今やコンピュータープログラムで固有値、固有ベクトルは簡単に求められるし、建物固有周期であれば経験式の方がずっと簡単だからである。レイリーの式は、その中間のどっちつかずの方法と言えそうである。

だが、レイリーの方法は19世紀後半から20世紀前半においてはかなり重宝されたようで、末広恭二も例題付きでこの手法の解説を与えたりしている(これについては後日)。

また、彼の示したアイデアは、その後リッツ(Walter Ritz)によって拡張されて非常に広範な分野に応用される一大手法へと成長した。それでこの手法は、レイリー・リッツ法という名前で人口に膾炙している。

ティモシェンコ(S. P. Timoshenko)はこの手法の有用性をかなりはっきりと認識していたようである。彼の著書 History of Strength of Materials での言及箇所(p.338 - 339)を読むとそのことが伺える。以下がその部分である(拙訳と原文を併記)。

レイリーは複雑な系の振動数を求めるにおいて、適当な振動形を仮定して単純な振動子の問題へと変換することで近似値を得ている。彼は近似の精度を上げるための手順について述べている。

微分方程式を解かずにエネルギー的な考察から直接振動数を計算するアイデアは、その後リッツによって詳細に検討された。現在レイリー・リッツ法は、振動学の分野だけでなく、弾性論、構造理論、非線形力学および物理の他分野において広く利用されている。

In finding frequencies of vibration of complicated systems, he obtains an approximate value by assuming a suitable form for the type of motion and so transforming the problem to that of the vibration of a simple oscillator. He describes the steps which can be taken toward improving the approximation.

This idea of calculating frequencies directly from an energy consideration, without solving differential equations, was later elaborated by Walter Ritz and Rayleigh-Ritz method is now widely used not only in studying vibration but in solving problems in elasticity, theory of structures, nonlinear mechanics, and other branches of physics.

そしてこの後に以下の文が続く。

材料力学と弾性論の多くの研究にこれほどつながりを持つ数学的手法はおそらく他にないであろう。

Perhaps no other single mathematical tool has led to as much research in the strength of materials and theory of elasticity.

と最大級の賛辞を与えているのである。実はティモシェンコは早くからこの手法に着目していたようで、自身もレイリー・リッツ法に関する論文を出したりしている。

人が「レイリー・リッツ法」と言う時、そのウェイトはリッツの方にあるようである。これはティモシェンコについても言える。上記の箇所からそれは伺えないが、彼の著書 Vibration Problems in Engineering のリッツ法の説明箇所(筆者が持っている Second Edition では、p.370 の "62. Ritz Method")を見ると分かる。

そこには、リッツ法によれば一次の振動数の精度が改良されるだけでなく、高次の振動数も得られるとあり、その脚注に以下のような補足が書かれている(p.371)。

レイリーは複雑な系の一次モードの振動数の近似計算だけにこの方法を用いたのであり、この方法を高次振動モードの検討に適用することについては懐疑的であった。

Lord Rayleigh used the method only for an approximate calculation of frequency of the gravest mode of vibration of complicated systems, and was doubtful regarding its application to the investigation of higher modes of vibration.

「レイリー・リッツ法」という名称が広まったため、二人の名前はセットで記憶される場合が多いようだ。だが、このネーミングに賛同しない人も結構いるようである。レイリーのアイデアはレイリー法でよろしい。だがリッツのアイデアはリッツ法であり、レイリーの名を付けて呼ぶのは不適切であるというのだ。

確かにリッツはレイリーの業績を直接参考にしたわけではないようである。だが、レイリー本人はというと、リッツのアプローチについて先取権を主張したりして、リッツ単独法という立場は容認できないようである。この辺りについてはまた後日。。。


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