2016
09.10

非実用的 Excel 活用法

Category: 構造解析
以下は、筆者がお役所勤めの知人から聞いた実話である。

その知人の部署では、物品の何をいくらでいくつ購入したといった管理表を excel で作成しており、毎月末にその表を更新して集計を取るそうである。

作業は二人(AさんとBさんとしておく)で行われ、Aさんがパソコンのモニターに向かって excel に記入されている数値を読み上げ、Bさんが電卓にその数値を打ち込んで計算を行い、計算結果をAさんに伝えると、Aさんがキーを叩いて excel に結果を入力するとのことである。

また、二つの表を見比べる必要もあるとかで、モニターにもう一つ別のモニターをぴったりくっつけて二つ目の表は別モニターの方に表示させるため、隣席(知人の席)のパソコンとモニターも駆り出されるとのこと。

知人はその作業中自席を離れることを余儀なくされるので、「ほんとエクセルには迷惑してるのよね」とぼやいていた(悪いのは excel ではないぞー)。

税金の無駄遣いだ怪しからん!などと思ってはいけない。このようなスローライフな世界があるという話題を提供して我々を癒してくれているのだと思う(たぶん)。

Excel は"表ソフト"ではなく"表計算ソフト"である。その計算機能はなかなか豊富である。その中のソルバー機能を使って前回の例題の固有値を検算してみたので、以下にその手順を示しておこう。

art135_fig1_1.jpg

まず質量マトリックスと剛性マトリックスをセル B6:D8 と B10:D12 に入力する。f = a √(k/m) のaにあたる係数を求めるのが目的なので、マトリックス成分の m と k は 1 としている。

これらのマトリックスを使って特性方程式のグラフを描くと以下のようになる。横軸に固有値 p2、縦軸に行列式 |K - p2 M| を取っている。グラフは、p2 を 0.1 刻みで増やして 3.5 まで描いたものである。 p は、系の固有円振動数である。

art135_fig1_2.jpg

グラフから縦軸の値がゼロとなる点が3つあることが確認できる。これらのゼロ点を与える p2 が求める固有値である。それぞれ 0.2、1.5、3.2 に近いことが読み取れる。

これらの値を固有値探索の初期値とするために、セル D17, D18, D19 に入力する。セル D17, D18, D19 は入力セルであるが、後述するようにソルバーによって値を変更されるセルでもある。

セル C17, C18, C19 には、各 p2 に対応する行列式 |K - p2 M| を求める式を入力し、C20 には、それらのセルの絶対値和を求める式を入力する。C20 は配列数式なので、Shift + Ctrl + Enter キーで確定する。

ソルバーダイアログを開いて、下図のように設定して

art135_fig2.jpg

実行ボタンを押すと、C20 が目標値(ゼロ)となるように C17, C18, C19 が決まり、固有値 p2 と f が以下のように求まる。表示桁はデフォルトのままとしている。

art135_fig3.jpg

グプタの本に出ている"正解"は有効数字3桁で書かれていて(文献1、p.9、Fig.1.7)、1次、2次、3次の a の値はそれぞれ 0.0708、0.198、0.287 となっているから上記の値と一致していることが分かる。

実務の世界で構造物の固有周期を求めるのにこんな方法を使うかというと、まず使うことはないだろう。使い慣れたソフトを利用したり、自作でやるなら数値計算ライブラリ(フリーでも強力なものがある)を利用するのが普通ではないだろうか。

ひょっとすると上記の方法ももっと汎用性を持たせることできるのかも知れないが、筆者はそこまで調査できていない。ちょっと遊びでやってみたまでである。こんなことして遊んでる方がよっぽどスローライフかも知れない。。。


参考文献

  1. A. K. Gupta : Response Spectrum Method In Seismic Analysis and Design of Structures, CRC. Press, 1992



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