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建築構造学事始

事実が理論に合わぬなら、事実を変えよ

If the facts don't fit the theory, change the facts.

これは、アインシュタインの言葉だそうである。敢えて訳せば、「事実が理論に合わぬなら、事実を変えよ」か。ある工学書の冒頭に書かれていたのを読んだだけなので、アインシュタインがどういった文脈でこの言葉を発したのかは知らない。時間と空間の認識を大きく変えたと言われる特殊相対性理論について、ユーモアを交えて語ったのだろうか?

この言葉を思い出したのは、内藤多仲の設計理論を読み返している時であった。

内藤の設計理論が、「間仕切りの入ったトランク」からヒントを得た話は有名だが、建物を施工する際に、壁と床(あるいは屋根)が一体となっていることが重要であると内藤は言っている。こうすることで、変形が抑えられて建物が耐震的になるからだが、別の理由として、実際の建物の水平力の流れが計算で想定した通りとなる、ということもあるのだ。

内藤の「日本の耐震建築の変遷」という講演の記録が残っているが、その中にも以下のような言葉がある。

「床が一枚盤で出来ておれば、開口ある架構も壁架構も地震力による変形が同一であるべきだと云う条件から力の分担比すなわち横力分布係数が解明出来るから、これによって骨組の設計も出来、変形量も分かるのである」

今で言うところの“剛床仮定”が成り立つように作れば、各壁の水平力の分担が計算できて、変形も正しく予測できるというわけである。

実物を理論に歩み寄らせて、両者に齟齬を生じないようにするという発想は、実務に疎く、机上の理論ばかり追いかけていた筆者には新鮮であった。


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