2013
12.18

剛構造と柔構造をどのように区別する?

Category: 建築構造史
剛構造と柔構造はどのように区別されるのだろうか?

硬いとか柔かいといった表現は、主観的なものであって、きちんとした定義無しに議論で使用できるものではないが、この点を明確にしている資料は多くないようだ。

地動入力を受ける建物を振動論的に捉えるなら、地盤の卓越周期と比較した建物固有周期の大小を基準にして、建物剛性が大きいとか小さいとか言うことができると思われる。

実際、真島健三郎も「耐震家屋構造の選択に就て(1924年)」で以下のように書いているが、この後に続く部分で地盤の卓越周期に触れて、それを1秒位と見てよいだろうとしている(地震の周期をこれ位としてよいのかというのが、柔剛論争の根幹ともいえる) 。

「それでは、如何なる構造を耐震的として選ぶべきでありますか、これについて考察してみたいと思います。家屋構造として地震に対抗しようとするには、およそ二種類あると考えられます。」

「一種は、現今の西洋建築のように、主として壁体を剛強にし、地震動の正面に立って腕づくで対抗しようとするものであります。又一種は、我が寺院とか塔とか、あるいは壁の弱い鉄骨構造のように、多く架構体でたわみやすく、地震動をなるべく避けて通ろうとするものであります。」

「前者の自己振期は、多く1秒以下でありますが、後者は1秒以上であろうと思います。それで私は便宜上、自己振期1秒以下のものを剛性建築、又1秒以上のものを柔性建築と呼んでおきまして、両種の利害について考えてみたいと思います。」

では、岩波の建築学用語辞典の定義はどうかと見てみると、以下のように説明されている。

剛構造(rigid structure):耐震構造の一方式。耐震壁を有効に配置するなどして構造物全体を剛強に構成し、大きな地震力に抵抗させる構造。

柔構造(flexible structure):構造物に作用する地震力を小さくする目的で、剛性を低くし、固有周期が長くなるようにした耐震構造。高層建築物はその一つの例。

辞典にしては随分とあいまいな説明で、最初の疑問には何も答えてくれていない(構造の専門書ではないので仕方ないと言えるが)。また、執筆者は柔剛論争のことが頭にあったのか、地震だけに限定した書き方をしている。これはちょっと頂けない。

例えば、風荷重が相手でも建物の剛性はもちろん問題になる。むしろ風荷重の議論において、剛構造と柔構造をはっきりと定義しているものもある。

日本建築学会の「建築物荷重指針・同解説 2004年版」の風荷重の部分を見ると、ガスト影響係数には建物自身の振動による慣性力の効果(共振成分の項)が考慮されていることが分かる。この効果は、建物剛性が低い方が顕著となる。

アメリカ土木学会の荷重指針である ASCE 7(2010年版)ではこの点がもっと明確で、剛構造と柔構造を区別して、剛構造では共振成分の項を落としたガスト影響係数の式を与えている。その際、建物の一次固有振動数が1 Hz(周期だと1秒)以上か未満かで剛構造と柔構造を区別している。

ガスト影響係数の概念は、カナダのアラン・ダペンポート(Alan G. Davenport)によって1961年に提案されたものであるが、これについてはまた別の稿で書いてみたい。

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