2014
01.11

マヌケ呼ばわりされる優秀な構造解析プログラム : SAP

Category: 建築構造史
以前、業務系のシステムエンジニアをやっている知人が

「サップなんて言ったら笑われるよ。エスエーピーと呼ばないと。」

というのを聞いて、SAPというIT業界では有名なソフトウェア企業のあることを知った。

建築、土木の構造分野でSAPと言えば、ウィルソン(Edward L. Wilson)によって開発された構造解析プログラムのことであり、本稿で取り上げるのはもちろんこちらのSAPについてである。

筆者は、世代的にもSAPを使用した経験は無いのだが、この流れをくむソフトウェアやSAPに盛り込まれた技術については身近に見聞きすることも多い。

SAPの最初のバージョンがリリースされたのは1970年であるが、リリースに先立ってウィルソンは以下のように述べている。

「大規模で複雑な構造物の解析を目的としたコンピュータプログラムが過去数年間で多く開発されている。その中には、完成に概ね75人年の作業量と200万ドルを要したものもあるが、出来上がったプログラムは、最新の構造要素を備えていないし、特に操作性が良いわけでもない。おまけに、ある程度のマシン依存性もある。」

「SAPは、10年以上の研究と開発の経験の成果であるが、ソースコードの基本的な部分は数人のエンジニアの手によって3ヶ月の期間で開発された。さらにここ数ヶ月で新たな構造要素と動的オプションが追加されており、ソースコード開発に要した総作業量は、およそ2人年である。それでも、出来上がったプログラムは、複雑な構造系を対象にこれまで発展してきた線形弾性解析用のものとしては、最も強力で効率化されたものと言えるだろう。」

ウィルソンの自信が垣間見える文だが、この後に

「そうは言っても、このプログラムも5年もすれば陳腐化すると確信している。」

と慎重とも取れるコメントを付け加えている。

ところで、SAPとは、A General Structural Analysis Program の後ろの3単語の頭文字を取って命名されたものであるが、我々はこれをエスエーピーと呼んではならず、敢えてサップと呼ばなくてはならない。これには理由がある。

Sapという単語の意味を英和辞典で調べると、マヌケ、あほといったスラングとしての意味が載っている。ウィルソンは、SAPという解析プログラムの名前にこの意味を込めているのである。

解析プログラムは知性を持つものではなく、モデル化や解析結果の検討については、あくまでユーザがその責任を負わなくてはいけないという考えである。以下はウィルソンのコメント。

"The slang name SAP was selected to remind the user that this program, like all computer programs, lacks intelligence. It is the responsibility of the engineer to idealize the structure correctly and assume responsibility for the results."

ソフトウェアのユーザは、このコメントを肝に銘じておく必要があるだろう。だが、昨今のエンジニアの実情や如何に。。。


参考文献:
CUREE : Historic Developments in the Evolution of Earthquake Engineering adapted from the 1998 CUREE Calendar illustrated essays by Robert Reitherman, 1997


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