2014
01.17

有限要素法誕生時の予言?

Category: 建築構造史
前回は、SAPというネーミングに込められたウィルソン(Edward L. Wilson)の考えについて書いた。本稿もこれに関連した内容であるが、SAPの初期バージョンがリリースされた1970年から15年ほど時間は遡ることになる。

1956年という年は、構造工学の分野だけでなく、広くCAEに携わる人には重要な意味を持つ年であろう。というのも、工学分野における有限要素法の始まりと言われる論文 "Stiffness and deflection analysis of complex structures" が Journal of Aeronautical Science に掲載されたのがこの年の9月だからである。著者は、ターナー(M. J. Turner)、クラフ(R. W. Clough)、マーチン(H. C. Martin)、トップ(L. J. Topp)の4人である。

この論文の概要や背景については、多くの本やウェブサイトでも取り上げられているので、ここで改めて書くことはしないが、論文の主題は、飛行機の翼(後退翼)の剛性を計算する新しい解析法についてである。

論文の前半では、簡単なトラスの例題を使って有限要素法(変位法)の計算手順(6ステップある)が説明されている。この方法は、当時としては斬新で画期的であったに違いないが、現代の我々からすると“お馴染み”のものである。

つまり、各ステップを要約すれば、(1)構造物をモデル化、(2)要素剛性マトリックスを作成、(3)要素剛性マトリックスをアセンブルして全体剛性マトリックスを作成、(4)境界条件を設定して全体剛性マトリックスを縮約、(5)荷重条件を設定、(6)全体剛性方程式を解いて変位を求め、内力を計算となる。

問題は、この後に続く以下の文である。

Steps (3) through (6) can be performed by nonengineering trained personnel.

ステップ(3)から(6)は、工学経験を積んでいない人にまかせても OK と言っているのである。

この真意は、おそらくステップ(3)から(6)はプログラミングなどによって自動化できるということなのだと思う。モデル化や解析結果の吟味はこれに含まれていないので、ウィルソンの言っていること(モデル化や解析結果の検討については、ユーザに責任がある)と同じと考えていいのだろう。

ただ、この文はうっかりしていると、工学経験がなくても有限要素法を使うことができる、と解釈しそうになる。そして、現代のCAEの状況は、この誤った解釈の方に近いように思えるのである。

立派なプリポスト機能がついたソフトウェアが容易に手に入り、入力さえすれば計算はやってくれるし、結果も見栄えよく表示してくれる。解析だけでなく設計も然り。設計式の背景や適用範囲を知らなくとも、とりあえず設計結果は得られるのだ。

もちろん、中身がブラックボックスのままでいいはずがない。エンジニアは自分で意識して中身を知る努力をする必要がある。そういった意味では、現代のエンジニアの方が厳しい環境にいるのかもしれない。

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