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2014
02.01

(誤り)+(誤り)=(正解)? (ウィルソンの非適合要素)

Category: 建築構造史
SAP の固有値計算で採用されているサブスペース法は、構造解析の分野では今でも恐らく一番と言っていいくらいメジャーな方法ではないだろうか。構造物の自由度数が非常に大きくても、求める次数はそれほど大きくないという場合に有効なので、θ法と想定状況が似ていると言えそうだ。

ただ、この手法の開発は、ウィルソンではなくて、バーテ(Klaus J. Bathe)であるようなので、サブスペース法については別の機会に取り上げることにしたい。

ということで、本稿はウィルソン(Edward L. Wilson)の提案した非適合要素についてである。

通常、構造物は何らかの荷重を受けた状態で、地面などで支持されて釣合いを保つ。構造解析では、力の作用する部分を力学的な境界、支持部分を幾何学的な境界と呼んだりする。

有限要素法では、構造物を複数の要素に分割するので、構造全体での境界の他に要素の境界についても考えなくてはならない。隣り合う要素の境界では、変位は連続だし、内力は釣合っているはずだ。

ただ、変位法では、力についての条件を近似的に扱う。その一方で、変位についての条件はちゃんと満足するような変位場を用意する。この条件の中には、本来、要素境界の条件(変位の適合性)も含まれている。

非適合要素は、その名の通りこの条件を満足しない。今でこそ非適合要素の有用性は広く受け入れられているが、有限要素法の草創期には、変位の適合性を満たすことは絶対に必要だと考えられていた。なので、1971年にウィルソンが矩形のアイソパラメトリック要素に非適合な変位モードを入れる方法を提案した際には、大いなる疑念の目を向けられたのも当然だろう。

この非適合要素について、MITのある教授は以下のようにコメントしたそうだ。

"In Berkeley, Two Wrongs Make a Right."

バークレーとは、ウィルソンの所属していた(いまも所属しているらしいが)カリフォルニア大学バークレー校のことであるが、では、"Two Wrongs Make a Right"とはどういう意味であろうか?

辞書を見てみると、「同じことを他人もやっているという理由で自分の悪いことを正当化すること」とある。ウィルソン以外にも非適合要素を使っている者がいて、ウィルソンも彼らと同じく禁忌を破ったということであろうか。

しかし、ウィルソンは著書の中でこの教授の言葉を紹介した後に、非適合要素を使用して良い結果が得られたが、2つの"理論上の罪"を犯してしまったと書いている。その罪とは、「変位の適合性を無視したこと」および「正当性が矩形以外の要素によって裏付けられていないこと」である。

"Two Wrongs Make a Right"には、否定形の表現("Two Wrongs Don't Make a Right")もあって、こちらの元々の意味は、誤りに誤りを足しても正解にはならない、ということだそうだ。先のMITの教授の言葉は、こちらの意味として取る方が適当に思える。日本語にすると以下のようになろうか。

「バークレーでは、不正に不正を重ねると正当というわけだ。」

矩形のアイソパラメトリック要素(節点は頂点のみ)は、純曲げ状態を正しく表現できない。圧縮と引張りを受ける各辺が直線を保つので、せん断変形が生じてしまい、要素のタテ×ヨコ比によってはこの効果が非常に大きくなってしまう。

そこでウィルソンは、純曲げ状態で要素内の釣合いを満たす変位と同形の変位モードを付加することで、誤って生じる応力がキャンセルされることを目論んだのだ。適合性には目をつぶっているが、このモードは節点とは独立に取られるので、要素剛性マトリックスを全体剛性マトリックスに足しこむ際に縮約によって消去される。

この非適合モードのことを“バブルモード”と呼ぶが、ウィルソン自身がそう呼んだのか、誰か他の人が言い出したのか、筆者はまだ確認できていない。

参考文献:
E. L. Wilson : Three Dimensional Static and Dynamic Analysis of Structures, 1995.

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