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2014
02.05

マグニチュードの語源

Category: 地震工学史
実験結果など何らかのデータをグラフに表示しようとして、そのデータの最小値と最大値の比が数千とか数万とかになる時には、対数で表示すると都合のいい時がある。対数を用いると、原点付近のスケールはそのままで、大きな値までを“縮めて”表示することができる。

人間はこのテクニック(?)を無意識に使っている。建築環境学を学んだ人なら、音、光、匂いなどに対する人間の感覚が、対数式であるウェーバー・フェヒナーの法則に従うことを知っているだろう。人間の知覚量は刺激の強さの対数式で表されるのである。

刺激が等比的に増えても、感覚の方はそれが等差的にしか増えていないように感じる、という見方もできる。これは、小さい刺激を敏感に感じ取りながら、なおかつ大きな刺激に"針が振り切れる"ことが無いように自然に備わった能力なのだと思われる。

星は、明るい方から順に一等星、二等星などと呼ぶようになっているが、この星の"等級"も肉眼で見た星の明るさがウェーバー・フェヒナーの法則に従うことを前提に決められている。

ところで、この"等級"のことを英語ではマグニチュード(magnitude)と呼ぶが、マグニチュードと言えば、地震国に育った日本人なら誰もが知っている地震の規模を表す用語である。それもそのはずで、地震のマグニチュードは、星の"等級"を拝借した言葉なのである。地震のマグニチュードも対数式として定義されている。

このことを知ったのは、USGS(US Geological Survay = 米国地質調査所)のサイトに記載されているチャールズ・リヒター(Charles Francis Richter)のインタビュー記事を読んだ時であった。リヒターは、言わずと知れた地震のマグニチュードの提唱者である。

このインタビューでは、1935年にリヒターがマグニチュードを定義するに至るまでの経緯が語られている。

リヒターは、異なる地震の規模を比較する目的で、カリフォルニアの広い範囲に設置されている7つの地震計で記録された振幅値を震央距離の違いを補正して比較してみたのだが、その最小値と最大値の差がとてつもなく大きくなってしまった。グーテンベルグ(Beno Gutenberg)のアドバイスに従って振幅値の対数を取ってみると、今度はちゃんと各地震の大小が分かるように表示された。

このようにして決めた新しい指標が、震度(階)(intensity)とは違うことを明確にする必要があったのだが、対数を取っている関連から思い浮かんだのが星の等級という言葉なのであった。それについて以下の様に書かれている。

"My amateur interest in astronomy brought out the term "magnitude," which is used for the brightness of a star."

あえて訳せば、以下のようになろうか。

「天文学への素人的な関心から、星の明るさに対して使用される"マグニチュード"という言葉が思い浮かんだ。」

ただ、この"amateur interest"のニュアンスは筆者にはよく分からない。アマチュア天文家としての興味と訳すと、リヒターはかなり天文学なり星の観測なりに詳しい感じ(自宅に観測用ドームを作っている人のように)となってしまうが、素人や門外漢としての興味と訳すと、リヒターはそれほど天文学には通じていない感じになってしまう。

マグニチュードを説明している本には、地震エネルギーの対数としてマグニチュードを定義しているものが多い。分かりやすさに定評のある大崎順彦氏の「地震と建築」の説明もそうである。しかし、筆者にはこの説明は唐突過ぎて分かりにくいと感じられた。

初めて分かりやすいと思える説明に出会ったのは、坪井忠二の「新・地震の話」においてであった。そこには、リヒターがそうしたように、振幅値による定義が示されていて、マグニチュードが地震エネルギーの対数となるのは「いわば偶然の産物と言えなくもない」と書かれている。

坪井忠二とリヒターは、地震の規模の指標としてどのような量を採用すべきかについて実際に何度も話し合った仲だそうだ。「新・地震の話」にもマグニチュードの説明のところで星の等級の話が出てくるのだが、星の等級が語源そのもとは書かれていない。なので、この命名の"逸話"については、きちんと伝わっていなかったのかも知れない。

ところで、インタビューでは、リヒターがマグニチュードを定義する際に、日本人地震学者の和達清夫の研究成果を参考にしたことにも触れている。

I found a paper by Professor K. Wadati of Japan in which he compared large earthquakes by plotting the maximum ground motion against distance to the epicenter.

上記では単に"地震計"と書いたが、リヒターが使用したのはウッド・アンダーソン型地震計と言われるものである。和達清夫が一般向けに書いた「地震」という本が1933年に出版されていて、リヒターがマグニチュードを提唱するよりも前であるから、当然マグニチュードに関する記述はないのだが、ウッド・アンダーソン型地震計の説明については図入りでかなり詳しく書かれているので、興味のある人はそちらを参照願いたい。

また、リヒターとグーテンベルグのマグニチュードとほぼ同じ考えのものが、日本人(ちなみに、和達清夫ではない)によって先に提案されているのであるが、これについてはまた別の機会に書いてみたい。

余談だが、この1935年には棚橋諒が「地震の破壊力と建築物の耐震力に關する私見」という論文を発表した年でもある。


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