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2014
02.12

科学者が使う悪魔の道具

Category: 地震工学史
マグニチュードを提唱したリヒターは、地震計の振幅値の対数を取ることで地震のランク付けがうまくいったことについて以下のようにコメントしている。

「私はラッキーだった。というのも、対数表示というのは悪魔の道具なので。」
(I was lucky because logarithmic plots are a device of the devil.)

"悪魔の道具"とは、どういう意味であろうか?キリスト教に関係する何か特別な意味でもあるだろうか?筆者はこの言葉の背景を知らないのであるが、以下のようなことではないかと推測してみた。

対数を発見したのは、"ネピアの数"に名を残すネピア(John Napier)である。ネピアはスコットランド人で、日本で言うと安土桃山時代の頃の人である。

ネピアは非常に頭脳明晰で独創的であったため、周囲の人から「悪魔的だ」とか「悪魔と取引しているらしい」などと噂されたそうである。しかし、元々は彼がいつもナイトガウンとナイトキャップの格好で歩き回っていたことがそのような噂の原因となったようだ。先のリヒターの言葉は、このネピアのことを下敷きにしているのかもしれない。

科学者で悪魔と言えば、ジョン・フォン・ノイマンを思い出す。彼もまた悪魔的な大天才などと言われたとどこかで読んだ記憶がある。この辺の発想は、キリスト教圏独特のものであろう。日本だと、頭脳明晰から"悪魔"という概念をなかなか連想しないのではないか。

悪魔といえば、なるべく関りたくない存在だ。でも、人の及ばない力を持っていそうだ。こう考えると、悪魔の道具とは、使い方を誤ると痛い目を見るが、上手くいけば非常に強力というような意味に取れそうだ。日本語だと、「諸刃の刃」という表現があてはまるだろうか。内容は建築構造ではないが、以下のことを思い出した。

分子生物学者の福岡伸一氏の著書の中に「プリオン説はほんとうか?」という本がある。狂牛病などのスポンジ脳症を引き起こす原因は、たんぱく質のプリオンであるということが認められており、プリオン説を唱えたプルシナー(Stanley B. Prusiner)は、この功績によってノーベル医学生理学賞を受賞しているが、この本では、福岡氏がこの定説に疑問を投げかけ、プリオン説を詳細に再検討した過程が書かれている。

福岡氏の主張は、プリオンはスポンジ脳症の原因ではなく、むしろ結果として患部に現れるのであって、原因はウィルスであろうというものである。読んでいてとても説得力があるので、福岡氏はさながら、証拠不十分のまま逮捕起訴された"プリオン被告"の無実を証明しようと奮闘する敏腕弁護士のようである。

この本の中に、プルシナーの主張の根拠となっている実験結果のグラフが出ているのだが、このグラフは対数軸を用いて表示されている。福岡氏はこのグラフに潜む"対数表示のマジック"を見事に暴いてみせている。対数表示から真数表示に描き直すと、変更されたグラフからはプルシナーの主張が成り立たなくなるのだ。

プリオン説を定説ならしめたのだから、悪魔の道具を上手く使ったと言えるのかもしれない。福岡氏がプリオン被告の冤罪の立証に成功したかについて興味のある方は、「プリオン説はほんとうか?」をご一読あれ。


参考文献:
Tucker McElroy : A to Z of Mathematicians


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