2014
02.18

その男、メジャー級(末広恭二のこと (2))

Category: 地震工学史
末広恭二について、アメリカ側から見た評価の例として、まずは大御所ハウスナー(George W. Housner)の話を以下に紹介したいと思うが、その前に末広恭二がアメリカで行った講演からロング・ビーチ地震に至るまでを時系列に示しておきたい。

1931年11月、12月
   末広恭二の3つの講演
   (カリフォルニア大学、スタンフォード大学、
    カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学において)
1932年4月9日
   末広恭二、急性肺炎のため死去
1932年5月
   講演内容を纏めたものがASCEから出版される
1933年3月10日
   ロング・ビーチ地震で加速度の記録に成功

これらの日時(ロング・ビーチ地震を除く)は、ASCEから出ている講演の記事「Engineering Seismology, Notes on American Lectures」(以下 Notes とする)のイントロダクション(末広恭二および公演の概要を紹介した内容)に書かれている。この部分は、末広にアメリカでの講演を依頼した、アメリカ側の強震観測のキーパーソンと言えるフリーマン(John R. Freeman)が書いたものである。

大崎順彦著「地震と建築」で末広の講演が1932年となっているのは、恐らく講演記事が出版された年を指していると思われる。

なお、末広の3つの講演のタイトルは以下の通りである。
I History of Development of Seismology in Japan
II Engineering Seismology
III Vibrations of Buildings in an Earthquake

前置きが長くなったが、ハウスナーの話である。これは、EERI(アメリカ地震工学会)から出ている Oral History というインタビュー記事からの引用である。

「マーテル(Romeo R. Martel)に大きな影響を与えたもう一人は、末広恭二であった。1923年の関東地震の後、末広は地震研究所の初代所長に就任している。私は末広の論文集を持っているが、それらを読むと彼が非常に有能な人であったという印象を受ける。」

マーテルとは、カリフォルニア工科大学でのハウスナーの師匠(日本的な表現だが)にあたる人で、soft first story の考えを提唱したことでも知られる。1930年頃の耐震建築の分野を代表する研究者である。

マーテルに影響を与えたもう一人は、構造力学でお馴染みのモーメント分配法(固定モーメント法とも言う)を考案したハーディ・クロス(Hardy Cross)である。ハウスナーの話を続ける。

「マーテルは、1923年の地震後に日本を訪れた際に末広に会い、お互い大変尊敬するようになったのだが、このことはマーテルの死後に私が引き取った、二人の間でやり取りされた手紙の内容からも見て取れる。」

しかし、インタビュー記事の中で何よりも重要なのは、"1920年代:末広の振子"という見出しの後に続く以下の部分であろう。

「応答スペクトルの歴史を振り返ると、そこに辿り着くまでに多くの事柄を見出せる。もちろん、どれくらいの人がそれらに通じているかを知らないが、応答スペクトルの起源は末広恭二が日本で作り上げた地震波分解器であったと私は考えている。」

つまり、ハウスナーの意見では、応答スペクトル法に先鞭をつけたのは末広恭二であることになるのだが、このような意見は、少なくとも筆者の調べた日本人による文献には見られないのである。

前回示した大崎順彦著「地震と建築」でもこのような見解は示されていないし、その他の文献も似たり寄ったりである。「地震と建築」の主要なテーマは応答スペクトル法と言えなくもないので、この功績をぜひ強調して欲しかった。更にハウスナーの話を続ける。

「末広は東京帝国大学附属地震研究所の初代所長であった。彼の装置は、振動周期を順に伸ばした6つの振子から成っていて、異なる振子が地震動にどのように応答するかを見ることを意図したものであった。地震時に記録される6つの振子の最大振幅は、変位スペクトル曲線上の6点を与えることになる。」

この「6つの振子」の部分は、恐らくハウスナーの記憶違いと思われる。末広自身の「地震波分解器及其記録」(1926年)や Notes を見ると、振子は13個あることが分かる。この装置については、「地震波分解器及其記録」に詳しいが、装置の写真は2番目の講演の記事内で見ることができる。

次回は、この装置についてもう少し書いてみたい。


参考文献
CONNECTIONS, The EERI Oral History Series, George W. Housner, Stanley Scott, Interview, 1997
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