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2014
03.20

20年の遅れはなぜ生じた?

Category: 地震工学史
日本で強震観測が本格的にスタートするのは、周知のように1950年代になってからである。1933年のロング・ビーチ地震からおよそ20年もの時間が経過している。アメリカの遥か先を走っていた末広恭二という人がありながら、何故このような後れを取ってしまったのであろうか?

この点は、アメリカ側から見ても不可解極まりないと思われているようだ。Robert Reithermanは、"Earthquakes and Engineers: An International History"の中で以下のように書いている。

「末広の1931年の講演の聴衆として一席を占め、アメリカではまだ誰も知らない地震工学と動力学における先駆的研究の例を全て目の当たりにしたとしよう。末広は既に6年も前に地震波分解器を作製して使用していのである。アメリカ人が1932年に強震計を作り上げて、年々広範囲に設置していく一方で、日本で最初の強震計が開発されて使用されるようになるのが20年後の1952年になるなんて想像出来るだろうか?」

大崎順彦著の「地震と建築」を見てみると、当時の日本が不況のどん底ともいえる経済状況にあったこと、その後太平洋戦争へと突入していってさらに状況が悪くなったことなどが、強震観測への取組みがなされなかった理由として挙げられている。一方で、以下のようにも書かれている。

「しかし、やる気の問題もあったと思う。1948年(昭和23年)に起こり、大災害を生じた福井地震がきっかけとなって、わが国でもどうしても強震観測をやらなければいけないということで、工学・地震学の有志が集まり、「強震計委員会」をつくったのは、終戦直後のまだ食料も十分でない混乱期であった。」

こういった理由のほかにも、末広恭二の"立ち位置"といったことも関係したのではないだろうか、と筆者には思えてならない。

それは、既に触れたように、応答スペクトル法の創始者であるビオや“平均スペクトル”を提案したハウスナーといったアメリカ側の地震工学の中心的存在である研究者が、応答スペクトルに先鞭をつけたのは末広恭二であると考えている(ビオについては多分に推測だが)のに対して、このような見解を日本側の研究者に見出すことが出来ないからである。

例えば、梅村魁著の「震害に教えられて 耐震構造との日月」の中に「アメリカの情報に刺激され」という文がある。そこには以下のように書かれている。(梅村魁氏は、この本にも詳しく書かれているが、武藤清の下で研究をスタートされた、耐震構造研究の第一人者である(あった)。)

「アメリカからの情報のうちで一番驚いたのは、1940年にアメリカのエルセントロで最大加速度330ガルの強震記録がとれ、しかもこの記録を種々の固有周期をもった振子に加え、その応答加速度の最大値が計算され図化されていることであった。」

この文からは、その驚きの源流がすぐ隣の地震研究所にあったと認識していたようには思えない。重要な概念が、かなり遠回りをして、時間をかけて戻ってきたという感じであろうか。「東大下暗し」などという言葉が思い浮かんでしまう。

さらにもう二世代遡って、佐野利器について見てみよう。柔剛論争中の資料でもある「耐震構造上の諸説」という1927年の講演記録を読んでみると、同じ大学に所属する末広恭二や物部長穂に対するかなり辛辣とも言える批判的な意見を展開していることが見て取れる。(末広は(元々は)造船系、物部は土木系である。)

二人とも地震時の地面の動きとして調和地動を仮定し、(弾性非減衰系の)振動論的なアプローチにによって建物の挙動を捕らえているのであるが、この2点において両人の考えには賛同できないとして以下のように述べている。

「Vibration due to Earthquakeを厳密にmathematicallyに研究して、その真相をつかむのには次の二つの事項に注意をせねばならぬ事と思います。1.地震動は不規則のままこれを扱う事、2.構造物の振動は不完全なままこれを扱う事。第一、地震動は度々申し上げたごとく極めて不規則なものであって、全体をSimple Harmonic Motionの永続などとは決して考え得られないのである。」

同じ大学に所属しながらも、とても一枚岩といえるような状況ではなく、むしろその逆であったと考えた方がいいようである。こういったこともあって、空間的に近い所に居ながらも、横の情報交換というものが余り効果的に行われていなかったのではないだろうか。このことは、数少ない資料をもとに想像を逞しくした憶測ではあるのだが。。。


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