2014
06.06

見習いたい AISC の姿勢

Category: その他
前回は、ガランボス(Theodore V. Galambos)の短い論文を紹介したが、AISC 360 その他の設計式の背景については、彼の有名な鋼構造の教科書 "Structural Members and Frames" や前々回に書いたチェン(W. F. Chen)の "Structural Stability" などにも、(もちろん全部ではないが)丁寧に書かれているので、詳細に興味のある人はそれらを参照されたい。

先日、はり柱(beam-column)という用語は、構造が専門の人にもあまり使用されないと書いたが、これはかなり広い意味でのことであって、柱の相関式や骨組の安定解析(stability analysis)に馴染みのある人であれば、よく目にする言葉だと思う。

そこでは、いわゆるはり柱理論(beam-column theory)という、軸力が曲げに及ぼす影響を考慮した理論(つまり釣合いは変形後で考える)の中で使用されるが、はり柱という言葉自体は、通常の微小変形理論で使用してもよいものである(と筆者は解釈している)。

AISC の安定解析(stability analysis)については、2010年に結構大きな変更があったのだが、(その内容については一先ず置いておくとして)そのようなことを筆者が比較的すぐに知り得たのは、AISC という組織の運営方針にあずかるところが大きいと感じている。

どういうことかと言うと、AISC は情報や知的財産に関して非常にオープンかつ太っ腹なのである。ウェブサイトでは、結構な数のドキュメント類を無償で配布しているし、誰もが読める FAQ もかなりの充実度だ。Steel Quiz といういかにもアメリカ的な催し(?)もやっていたりする(日本語に訳すと鋼クイズとなって面白くなさそうに聞こえるが )。また、有志の手による解析設計ツール(無償のものも多い)もかなりの数が提供されていて、これらは大変参考になる。

さらに、筆者のようなものにとって嬉しいのは、鋼構造関連の論文でよく目にするエンジニアへのインタビューの音声ファイルが無償で公開されていることである。この中にガランボスへのインタビューもあって、肉声(かなりだみ声というかかすれ声)で彼が自分の半生を語っているのを聞くことが出来る。これを聞くと、ガランボスが恵まれたとは到底言い難い環境(難民としてアメリカへ移住)からスタートした苦労の人であったことなども分かる。

このように AISC は大変サービスが充実していて感心させられる。そして、日本(の鋼構造協会や建築学会など)にも同じようなものがあるといいのに、と思ってしまう。だが、これは単にサービス云々というよりは、根底にある思想から違うのだろうなとも思えるのである。

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