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2014
06.09

産業革命も地震学も始まりはイギリスだった

Category: 地震工学史
末広恭二の2番目の講演 : Engineering Seismology は、その題名が表す通り、従来の地震学や地球物理学とは異なるアプローチで地震を捕えようとする「地震工学」を提唱したものである。その具体的内容をこれまで何回かに渡って書いてみたが、今回は少し寄り道をして、地震学の起源に纏わることについて書いてみたい。

地震学は地震の少ないイギリスに起源がある、という意外な事実を比較的最近になって知った。気象庁などのウェブサイトで、世界の地震発生分布の状況を見ることができるが、これを見るとイギリスは地震が全くない訳ではないが、日本を含めた環太平洋地域に比べると、圧倒的に発生回数は少なく、規模も小さいことが分かる。

イギリスで使用される設計コードに目を通したことのある人なら、主なコードで地震力が考慮されていないことを知っているかもしれない。例えば、鋼構造設計コード BS 5950 の初めの方を覗いてみると、"Section 1. General" の "1.1 Scope" には3つめの注記(NOTE 3)として、以下のように書かれている。

NOTE 3 Design for seismic resistance is not covered in BS 5950.

但し、全く耐震設計コードが無い訳ではなくて、イギリスでも使用されるユーロコード 8(Eurocode 8 : Design of structures for earthquake resistance)は耐震コードであり、イギリス用のものはちゃんと英国規格協会(British Standard Institute)から出版されているが、このユーロコード 8 の現在の適用割合などについては、残念ながら筆者は確かな情報を持っていない。

イギリスで地震を研究していた人達というのがさらに意外で、それは我々に大変馴染みのあるフック(Robert Hooke)とヤング(Thomas Young)なのである。周知のように、フックは"フックの法則"に、ヤングは"ヤング率"にその名を残していて、どちらも水や空気のようにお馴染み過ぎて、却ってその重要さに思いを巡らせることは無いくらいだ。

このフックとヤングの件を知ったのは、ハウスナー(G. W. Housner)の講演記事(Conference Lecture - Historical View of Earthquake Engineering)を通してであった。以下にその部分を示そう(拙訳)。

「初期の地震工学で最も傑出していた人のほぼ全員が、地震の少ないイギリスから出ていると知ると驚かされる。」

(中略)

「工学でよく知られるフックの法則の発見者であるロバート・フック(1635-1703)は、1667-68年に英国王立協会で一連の講演を行っていて、この講演は、"Lectures and Discourses of Earthquakes and Subterranean Eruptions"というタイトルで1705年に書籍として出版されている。」

「これは地震工学の時代に先立つもので、実際、フックは地質学的な問題を検討して、かつて水底にあった土地が地震によって隆起することで山地が形成されたと主張したのである。このことから、プレートテクトニクス理論へと至る道程の初めの一歩を踏み出したのは、フックであると言えるかもしれない。」

プレートテクトニクス理論が画期的であったのは、「動かざること山の如し」の常識を覆したことにもあるかと思うが、案外と昔の人は大地は不動だとは思っていなかったのかもしれない。大崎順彦著「地震と建築」にも、菅原道真が方略試という国家試験で出題された「地震について論ぜよ」という小論文の課題への解答として、以下のようなことを書いていると紹介されている(菅原道真は、9世紀後半(平安時代)の人であるから、ロバート・フックよりも、さらにずっと前の時代の人である)。

「古い話にもあるように、水の上に乗る地形には地脈が連なっています。すでに水の上に乗っているのですから、流波にうちよせられ、どうして安定していられましょう。」

フックの行った講演については、Robert Reitherman の文献にもう少し詳しく書かれているので、次回はそれを紹介したい。

参考文献

G. W. Housner : Conference Lecture - Historical View of Earthquake Engineering, Proceedings of the Eighth World Conference on Earthquake Engineering, San Francisco, Post-Conference Volume, Prentice-Hall, Englewood Cliffs, New Jersey, 1984.

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