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2014
07.04

剛派、柔派というよりは

Category: 地震工学史
東福寺正雄は、建物の自己振動を考慮することの重要性を説いて、佐野利器の震度法によるアプローチを批判しながらも、結果的には佐野と同じく剛構造(建物高さや基礎などに条件があるが)を推奨している。同じく建物の自己振動を重要視した真島健三郎やアルトゥーロ・ダヌッソなどとは違った見解を持つに至っていることは興味深い。

柔剛論争の際に議論された内容を柔派か剛派かとだけ分けるのは、この時代の議論をかなり単純化して見てしまうことになるように思われる。

柔か剛かという切り口の他にも、建物の耐震性の検討に理論(振動論)を積極的に活用しようとする考え(の人達)と、振動論の妥当性まだはっきりしないのだから実際の建物に適用するのは時期尚早であるとする考え(の人達)とに分けることもできそうである。

そういう観点から見ると、末広恭二は積極的に理論を用いて建物の耐震性を論じた側になる。以前このブログでも触れたように、佐野利器の「耐震構造上の諸説」という講演で、末広は佐野に「空論を聞かされているのか事実を示されているのか分からない」などと批判されているが、では末広は反剛派かというと、あくまで振動論者なのである。

アメリカ講演(2番目のもの)の中でも、建物と地盤の共振に言及している部分で、以下のようにアメリカの柔構造建築に疑問を投げかけている(拙訳)。

「東京の低地には8階建以上の比較的高い(この国では低いが)建物が建っていて、0.7秒位の加速度周期であることが多いことから、そういった建物の自由振動は、特に剛強に作られない限り、この地面の加速度周期とほぼ同じ周期を持っていることも不安を抱かせる。」

「アメリカでの地震動の特性に私はあまり通じていないが、恐らく日本のものとそれ程異なるものではないだろう。そうであるなら、通常2秒を超える長い周期を持つ摩天楼は、この意味で非常に好ましいと思われる。それらの建物はもともと柔であるにも拘わらず、なぜ時として意図的にさらに柔らかく作られるのか、その理由を私は見出せない。」

ちょうど soft first story の考えがアメリカで出てきた頃ではあるが、末広は"摩天楼"と書いているので、もっと広い意味の柔構造建築を指しているようだ。

末広恭二が理論だけで終わっていないのは、このブログに書いてきた通りである。末広が加速度計の開発を主導したことは、まさに地震を定量的に捉えようとする試みであったわけであるから、末広の業績は佐野利器の批判に実行動で答えてみせたものであると言えるかもしれない。


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