2015
01.29

横座屈で見落とされがちなこと

Category: 鋼構造
今回は柱ではなくて、鋼はりの横座屈の話である。

話を簡単にするために、以下では荷重は鉛直下向きに作用するものとし、部材は均質で断面の図心と重心は同じ位置にあるものとする。

圧延のH形鋼やI形鋼のような二軸対称断面では、図心もせん断中心も断面の中央に来るが、溝形鋼(チャンネル材)では断面の図心とせん断中心の位置が異なるので、(断面をカタカナの コ の字のように置いて)強軸曲げで荷重を受ける場合は、図心位置に荷重をかけると、はりにはねじりが生じてしまう。

横座屈は、強軸回りに曲げを受けるはりがねじれ変形を伴いながら曲げ面外方向にはらみだす座屈であるから、元からねじれを生じているようなはりは、横座屈に対して注意する必要がある。実際、鋼構造設計規準の第五章の解説などには、このようなケースの曲げ許容応力度の扱いについて検討されている。例として挙げられているのは、溝形断面部材などである。

これは荷重の作用点とせん断中心の水平位置の違いに着目した場合の話である。もう一方の違い、つまり両者の高さの違いについては同箇所には明確には書かれていないが、こちらも横座屈の挙動に少なからず影響を与える。これは、図心とせん断中心が一致するH形やI形の断面についても言えることである。

荷重が自重の場合は、重心(今はイコールせん断中心)に作用するので、横座屈を生じた状態でも自重によるねじりは発生しない。以下がその場合の図であるが、薄い色の断面は横座屈する前の位置を表しており、黒丸はせん断中心である。


LTB selfweight


一方、上フランジに荷重の作用点がある場合は、断面が回転しながら横にはらみ出すと下図のようになり、荷重の水平位置がせん断中心から離れるので、作用荷重によってはりはねじりを受けることになり、一層はらみ出すことになる。


LTB top flange load


下フランジに荷重の作用点があるなら、荷重は横座屈を抑える働きをして都合がいいのだが、そのような状況は実際には稀であろう。

このように、荷重作用点とせん断中心の水平位置のずれだけでなく、高さ位置のずれも横座屈に影響することが分かる。では、実際問題としてどちらが重要かというと、後者の高さ位置のずれの方が重要だと言えそうである。

それは以下のような理由による。

上記の鋼構造設計規準で取り上げられている溝形断面部材などは、構造的にはあまり重要な役割を担わないのが通常である。そのためだと思うが、規準の本文ではなく解説の中で取り上げられており、その対処については設計者の判断に任されている。

一方、高さのずれはH形鋼などの主要なはり部材にも影響することから、この要因を考慮した対処法を条文中にはっきりと規定している設計コードもあるのである。

カナダのCSA(Candian Standards Association)から出ている鋼構造物の設計コードCSA-S16(2009年版)の"13.6 Bending - Laterally unsupported members"には、荷重の作用点がせん断中心よりも高い位置にあるはりについては、安全側の評価を与えるように配慮されている。

下記にその部分を示そう(拙訳)。文中のω2は曲げモーメント勾配の影響を考慮した補正係数(日本の鋼構造設計規準ではC)、Lは支点間距離、Muは弾性横座屈モーメントである。

支点間でせん断中心よりも上に荷重を受けるはり部分については、その部材に横方向拘束も回転拘束も与えない部材を介して荷重が伝達される時は、これに伴う不安定効果を合理的な方法を用いて考慮するものとする。

上フランジのレベルに作用する荷重に対しては、より正確な解析の代わりに、ω2を1とし、且つピン支持のはりについては座屈長さを1.2L、それ以外については1.4LとしてMuを決定することができる。


原文は以下。

For unbraced beam segments loaded above the shear centre between brace points, where the method of load delivery to the member provides neither lateral nor rotational restraint to the member, the associated destabilizing effect shall be taken into account using a rational method.

For loads applied at the level of the top flange, in lieu of a more accurate analysis, Mu may be determined using ω2 = 1.0 and using an effective length, for pinned-ended beams, equal to 1.2L and, for all other cases, 1.4L.

尚、この規定はCSA-S16の2009年の改訂で盛り込まれたものである。

参考文献
CAN/CSA-S16-09 Limit States Design of Steel Structures

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