2015
03.23

正多角形断面の図心を通る軸についての断面二次モーメントが軸の方向によらず一定であることの証明

Category: 材力、構力
前回と前々回の問題は、正多角形断面の図心を通る軸についての断面二次モーメントが軸の方向によらず一定であることを基にして作成したものである。

種明かしをすると、この問題は筆者の完全なオリジナルではなくて元ネタが存在する。それは、武藤清 二見秀雄著「趣味の構造力学」の p.75 に出ている以下の問題である。

正三角形断面の重心を通る任意の軸に対する二次モーメントはすべて相等しきことを証明せよ。

これは、建築世界(昭和9年10月号)に掲載された懸賞問題である。浜田稔による講評が出ているのでそれも書き写すと、

◇ 講評 浜田稔
本問は断面の性質に関する問題である。ゆえに断面の性質として通常の参考書に記されている事項は既知事項としてそのまま使用して差支えない。最も明快な解答は次のごとし。

(解)
正三角形は3本の対称軸を有し、その軸に関する二次モーメントは皆相等しい。このことを正三角形の重心に対する二次モーメント楕円について考えうるに、楕円の3動径が等しいこととなる。
 かような楕円は円でなければならぬ。したがっていずれの軸に対する二次モーメントも皆相等しいこととなる。
 以上の解によると、何等の計算を行わずとも所要の証明を得る。もちろん解答としてこれでよいはずであるが、応募者中にはあるいはこれでは物足りないと思ったか、またはそれに気付かなかったか、ほとんど全部がいろいろと計算を行って証明を行った。もちろんそれでもよいのであるが、明快さに差があることに注意されたい。

このことは正三角形だけでなく正多角形についても言えることなので、これをヒントに前回と前々回の問題を作ったわけである。

上記の(解)に示されるようなエレガントな解答はとても思いつかないので、「いろいろと計算を行って」正多角形断面の図心を通る軸についての断面二次モーメントが軸の方向によらず一定であることを証明してみよう。ただ、それには準備がいる。

まずは、「最近は証明問題など解いたことないなぁ。。」とさりげなくつぶやいて、もし誤った証明をしてしまった際の言い訳を用意しておく。

次に、材料力学で学んだことを思い出すことにして、軸の方向を変えた時の断面二次モーメントの変化云々を議論する際には、対称軸は主軸であり、対称軸において断面二次モーメントは極値を取ることを確認しておく。そして、軸の方向を変えた時に断面二次モーメントが変化するものとして話を進めていく。

もう一つ、これが重要なことだが、正多角形では対称軸を一つ選ぶと、それに直交しない別の対称軸が必ず存在することも確認しておかねばならない。例えば、正三角形なら、最初に選んだ対称軸とのなす角が 2p/3 の対称軸が存在するし、正方形なら p/4 の対称軸が存在する。正五角形以上は説明するまでもないだろう。

ここまで準備しておいて、断面二次モーメントの軸変換の式を考える。対称軸の一つを x 軸とし、それに直交する軸を y 軸とすると、x 軸から y 軸に向かって θ だけ回転した軸についての断面二次モーメント I は以下のよう書かれる。

art92_eq1.png

対称軸であるから断面相乗モーメントの項は出てこない。これは以下の様にも書ける。

art92_eq2.png

極値の条件は、これをθで微分してゼロと置いて、

art92_eq3.png

Ix ≠ Iy ならば sin 2θ = 0 である。2θ が 0 から 2p まで動く時に sin 2θ = 0 となるのは、θ = 0, p/2, p の場合に限られる。つまり、x 軸と y 軸の向き以外ではゼロにならない。

だが、先に書いたように x 軸と y 軸以外の向きでも I は極値を取る必要があるので、この必要性を満たすには、Ix = Iy を受け入れるか、最初に掲げた「断面二次モーメントが変化する」という前提を取り下げなくてはならない。

Ix = Iy を受け入れるとすると、上記の I の式にこれを代入すれば、I = Ix となり、結局のところ断面二次モーメントは軸の向きによらないということになる。

以上が「証明のつもり」である。何か不備があるようだったらご指摘願いたい。

書きながら気が付いたのだが、「断面が対称軸を持つとき、その軸とそれに直交する軸がその断面の主軸である」という材料力学の教科書の表現は今回のケースを見逃していて、実際には主軸が無数に存在する(見方によっては、主軸は一つも存在しない)という特殊ケースもあると言うことが出来そうである。

スポンサーサイト

トラックバックURL
http://ksmknd16.blog.fc2.com/tb.php/92-8e1e9fb3
トラックバック
コメント
私の方は、Ixが恒等的にIyになるアプローチで行きました。確かに対称軸が3つ以上という根拠とした方が計算量が少なくてよいです。
whitefoxdot 2015.03.25 20:59 | 編集
次の記事の内容も「趣味の構造力学」のこの問題を見たことで気が付いたことです。かなりシンプルになったかなと思ってます。間違ってなければの話ですが。。
神田霞dot 2015.03.27 00:27 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top